NO-MA記者クラブ
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【エデュケーションサポーターの活動を振り返って】
今年度のボランティアスタッフ募集要項をみたときに、従来の「会場ボランティア」・「記者クラブ」と並び、「エデュケーション・サポーター」とあったので興味を持った。昨年は、キュレーション・サポーターの活動があり、ボランティアが作品展示を企画する、というものだった。そこから一歩進んでの活動なのか。「エデュケーション」とつくからには、芸術祭に関わる何かを教育的に発信するということなのだろう、と勝手に解釈し、記者クラブと併せ応募した。
いざ活動が始まってみると、内容は全四回の会議を経て、会期末11月21日の午後に実施するエデュケーションイベントを企画するというものだった。「イベントを、自分たちで?四回の会議で、企画して実施までできるんやろか…」なんて不安が浮かんだが、そんな不安にじっくり浸るヒマなどなかった。「やる」しかない。
そのゴールに向かって、毎回の会議は、まさに「無から有」を、各自の想念を実体のあるものに作りかえてゆくための、なかなかにハードで濃密な時間であった。10時から17時まで、間に一時間の昼休憩を挟みつつ、みっちり。(その様子を随時記事にしようという目論見は、あっさり外れた。全く頭の中の整理がつかなかった。)
美術教育の専門家、奥村高明教授の講演・ワークショップから、「アール・ブリュット」そのものについて深く考える機会を得たこともあった。
しかし、会議の多くの時間は、今回の芸術祭の各作品から何を感じ取り、それをどのようなコンセプトでイベントとして実現していくか、そのアイデアを紡ぎだしていくことに費やされた。例えば、キーワードからテーマを決めていく際も、一言一句、助詞を入れるか否か、ひらがなにするのかカタカナにするのかに至るまで、サポーター一同、熟考し検討を重ねた。( 筆者は毎回脳みそフル回転で、アタマから煙が出そうだった… )
そして、最終的に「『ちかくのまち』にどっぷり浸れる4つの体験 ちかくのじかん」にタイトルが決まり、4グループによるそれぞれのイベント内容も明らかになった。
自分のグループは、出展者武友義樹さんの「長いひもを振り続ける」日常から着想を得て、参加者にも武友さんのようにひもを振る体験をしてもらおうと考えた。その実現に向け、三人のメンバーで意見を出し合った。
一口にひも、というがどんな素材のひもがいいのか。太さや長さもいろいろある。どうせ振るのなら、ひもだけでなく、新体操のようなリボンや布、和紙素材も試してみたい。
ひもの持ち手はどうしよう。せっかくなので、各自で千代紙やカラーテープを貼ったり、カラーペンで模様を描いたりしてもらおう。そうすると、牛乳パックが持ち手の素材に適しているかな。空きパックをよく洗って準備してこよう。持ち手の先端にクリップをつけておけば、いろいろなロープや紙ひもに付け替えて、振った時の感触の違いを楽しんでもらえるかも。そうだ、鈴をつけたら、聴覚でもひも振りを楽しんでもらえるなあ。
参加者がひもを振る様子を「コマ撮りカメラ」で撮れば、その軌跡が見えて面白いかもしれない…。
等々、次々にアイデアが出てきた。準備を進めるにあたって、もう一度武友さんの展示を見直しに行ったこともあった。第四回の会議の日は、イベント会場のNO-MAの下見の後、上記の素材準備に全力を尽くして終了。
そして迎えたイベント当日。心配していたお天気も上々でほっとした。
自分たちの準備物を会場の蔵に並べ終えて、その後二番目の体験「見る・見ない 二人で作品鑑賞」の準備のお手伝いをした。その中の一つに、四つのイベントを体験するともらえる「指文字のカード」作りもあった。全部で五枚、全て揃うと、ある言葉になる。裏には、点字も貼ってある。揃った時の、参加者の笑顔が目に浮かぶようだ。
まず、エデュケーションサポーターのメンバーが、それぞれのイベントを体験しようとやってきた。色を塗り、千代紙を貼り、和紙テープに思い思いの絵や言葉を描く。なんだか楽しそう。そしていよいよ中庭に出て「ひも振り」開始!縦に、横に、ひもが様々な軌跡を描く。全身で、全力で。別のひもにつけかえてもう一度。武友さんとよく似た素材のロープでも、同じような軌跡を描くには年季がいるようだ。撮影したタブレットのコマ撮り映像には、サポーターの方々の、無心でひもを振る姿と、勢いのあるひもの軌跡が写っていた。
その後、いよいよ参加者をお迎えして本番開始。そのうちのお一人は、和歌山県からいらっしゃったそうだ。持ち手やロープ、和紙テープの装飾を楽しんだ後、各自、用意したひもをあれこれつけかえて、存分にひも振りを体験。コマ撮り画像を見せると、「ひもによって、全然振れ方が違いますねー。」と額に汗をにじませて、とても楽しそうに話して下さった。新体操経験者のサポーターさんが、美しいリボンさばきを披露して下さり、一同で見とれる一幕もあった。その後は、NO-MA見学の親子連れの方がのぞきに来られて、小さな男の子もひもをふりふり。中庭に、様々な年齢層の歓声が聞こえるひとときとなった。
そういえば、第二回ボーダレス・エリア近江八幡アカデミーに参加した際に、武友さんとのコラボ作品を出展している福留麻里さんが、「とにかく、ぜひ、ひもを振ってみてください。」と話されていた。それを聞いて、自分たちのイベントの取り組みにはやってみる意味がある!と大いに心強く思ったものだった。
実際に、自分でもひも振りを体験し、参加者の方々の様子を見て気づいたこと。それは、「ひもを振ることは、楽しい」ということ。手だけでなく、時に全身を使って「ひもを振る」。それは、鼓動と連動するようにリズムを刻むこともあり、心地よかった。
武友さんが、なぜずっとひもを振っておられるのか、それはご本人にしかわからない。でも、その日常に、ひもを振るという行為があり続ける理由が、ほんのひとかけら、伝わった気がした。
(記者:つじじゅん)
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【展覧会】「ちかくのまち」
http://www.no-ma.jp/town_of_perception
ボーダレス・エリア近江八幡芸術祭 ちかくのまち | ボーダレス・アートミュージアム NO-MA 滋賀県近江八幡市の歴史ある伝統的建造物群保存地区にあり、昭和初期の町屋を和室や蔵などを活かして改築したミュージアムです。また社会福祉法人グロー(GLOW)~生きることが光になる~(旧 滋賀県社会福祉事業団※....
ボーダレス・エリア近江八幡芸術祭「ちかくのまち」を舞台にエデュケーション・サポーターが企画する学び・交流のひととき
【ちかくのじかん 「ちかくのまち」にどっぷり浸れる4つの体験】
4つの体験を巡る「ちかくのじかんツアー」体験記
エデュケーションサポーターが、会期中に作家とその作品と向き合い、理解を深め、サポーターと参加者が分かち合える、芸術祭「ちかくのまち」の集大成ともいえる体験イベントであった。
1の体験
「体をつかってひもアートで遊ぼう」
武友義樹さんの日課は、長いひもを振りつづけること。
役目を終えた持ち手は、屋根のうえに放り投げて、また新しい持ち手をつくる。
ひもを振ってみて、どんなかたちになり、からだや手にどんな感覚があるのか、追体験できるワークショップであった。
ひもの素材は、武友さんが、使われていたナイロンのものだけでなく、軽いカラフルなリボンや、オーガンジー。白いリボンには、オリジナルの絵をかいてもよい。ナイロンひもには、カラーテープでアクセントをつけたりもできる。
作り手のそのときのひらめきで、オリジナルひもをチョイス。
持ち手は、あらかじめサポーターが土台を用意。参加者は、そこに、カラフルな色紙、千代紙、テープで装飾。持ち手とテープは、クリップで止められる仕組みで、ナイロン素材のひも、リボンと重さの違いで、からだにどう伝わるのかを体験。
筆者は、クリスマスカラーを意識した千代紙で持ち手を装飾。ひもは、武友さんと同じナイロン素材に、赤、緑のテープでアクセントをつけた。
気分は上がる。ひもは、一見軽そうに見えるけれど、振り続けると、その重量は、かなりのもの。ロープにも感じられる感覚。武友さんのエネルギー、体力は、想像していたより遥かにすごいと体感した。
持ち手には、季節感や、その時の思いやあふれでる表現を込めることができることも発見であった。
武友さんが、ひもや持ち手に込める思いやふれあいを、この体験で少し分かち合わせていただいた。体験してみないとわからないことがある。サポーターに、最後のピースを渡された気がした。
2の体験
「”見る・見ない”2人で作品鑑賞」
視覚を使わず作品を見ること、見えない人に作品を伝えることだけでなく、展覧会場の誘導もアテンドする支援者の役割となる。
会期はじめに、美保さんガイドを利用したことがあった。
美保さん人形は、ユーモアたっぷり。
わかりやすい語り。思わず笑みがこぼれる。
ヤマガミユキヒロ作品の解説では、“ロケーションハンティング…音声が加えられています。
刻々と変化する日のあかり...一瞬の風景に重ねて...“
しめくくりに「私のガイドから離れられるのは、残念ですが、イヤホンをとったほうが、音もしっかりと楽しみやすいと思いますよ」のフレーズに 、美保さんはチャーミングだなあとその時は思ったが、これも支援者としての配慮だったのだと、この体験会で再認識することとなった。
さらに、奥村邸では、土間から庭へのアテンド。古民家の段差のある床や敷居、作品会場の案内版まで、見えない人をどう案内するか、また目隠しした状態で歩くとは、どういうことかとマルチタスクを求められるということを体験することができた。
段差は、特に気を付けていきたいところだ。作品だけでなく、会場においても、ボーダレスな感覚が必要だと気付かされた。
サポーターのアイデアで、目隠しは、美保さんアイマスク。
美保さんが会場に何人もいる状態が微笑ましく、会場をなごませてくれた。
一例だが、筆者は、魲万里絵×谷澤紗和子作品、“蛇と少女”を目隠しして鑑賞した。
ペアの解説者は、作品に精通していて、表現が緻密で、わかりやすく、それゆえ、作品が刺激的で、怖いくらいの感情も湧いてくる体験をした。
この作品と対面するのは初めてだったので、解説者の作品への理解が、見えない人に作品のエッセンスを伝えることができたのだと感じた。
視覚が閉ざされると、感覚を研ぎ澄ませ、想像力をもって、こころの目で作品を鑑賞することになる。何倍もの、エネルギーと情熱をもって作品に向き合うこととなるという、気づきが与えられた。
バスに乗って会場を安土B&G海洋センターにGo!
秋が深まりを感じる。夕方の日に照らされた会場は、黄金色に色づく。
椎原保さんのインスタレーションは、会期が進むとともに、会場の敷地内にどんどん広げられたが、歩道ということもあり、縮小。会期初日の規模に戻っていた。
椎原さんの合意のもと。
坂本三次郎さんの日常においても、制作しては、周囲とのつながりの中で、作ったものを縮小したり、移動したりということがあったのだろうと最終週の椎原さんのインスタレーションを目にして気づかされた。
3の体験
「カカシ?ヒト?-カカシになりきり撮影会」
小西節雄さんの作るリアルなカカシになりきってみませんか?
エデュケーションサポーターが、小西さん宅に訪問し、カカシの衣装や小物をレンタル。
サポーターと小西さんの繋がりが本体験イベントに感じられた。
小西さんは、ヒトの笑顔が見たいから、カカシを作り続けるのだとか。
それぞれのひらめきで、カカシコーディネートを身にまとい、カカシとともに、カカシになりきって、撮影会をした。
笑顔あふれる時間。小西さんの思いがそこにあった。
4の体験
「かってにアート ひろって おいて 感じて」
ちかくのモノ(流木、木片石、どんぐり、落ち葉など、エトセトラ)をひろって、つくってオブジェをつくろう
坂本三次郎x椎原保に着想を得たアート体験。
日が暮れ始め、一日の終わりに、サポーターが、集めてくださったちかくのモノをならべて、出来上がる空間や、周りの風景とのつながりを感じながら、ひとときオブジェづくりに没頭した。
なにかを置くことで、繋がる。肌で感じられた。
参加者とサポーターとのつながり
ひとときであったが、サポーターの熱い思いが伝わってきた。作家と向き合い、どう鑑賞するひとに伝え、共有していくのかが、熟考されていた企画であった。今後の作品鑑賞のツールとなるヒントにあふれた、学びの多い体験会であった。
最後に
参加者どおしの出会いの場NO-MA
当時者だけでなく、支援者として、参加、鑑賞しているヒトもいる。
長く家族や近しい人、子供を支え、何か糸口がないかと、NO-MAを訪れるヒトがいる。
ボーダレスアートをシェアするなかで、作家の暮らしや、支援者とのかかわり、それぞれを愛おしく分かち合うこと。
そのような、温かいつながりが芸術祭をとおして育まれていると感じた。
(記者:田中純子)
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【展覧会】「ちかくのまち」
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【作家にまつわる情報にまつわること】
「これは、障がいのある人の作品ですか?」
NO-MAで初めてヤマガミユキヒロさんの作品を目にしたとき、誰かに聞きたくなった。NO-MAには障がいがある作家の作品も、障がいがない作家の作品も展示していることは事前に知っていた。緻密でクールなヤマガミユキヒロさんの作品は、私が抱く障がいのある人の作品のイメージとはかけ離れていた。だから、ふと確認したくなったのだ。
後になって思った。なぜそれを確認したかったのだろう。そして、それを知ったらどうだったというのだろう。
アール・ブリュットは「生(き・なま)のままの芸術」を意味し、美術の専門的な教育を受けていない人が自分の内側から湧き上がる衝動のまま表現した芸術のことを指す(NO-MA刊行物より)。つまり「アール・ブリュット=障がい者アート」とは限らない。しかし同義だと捉えている人も多いことを、記者はNO-MAの活動を通してはじめて知った。
障がい者アートを見ようと思ってNO-MAに来ること、そうとは思わずに来ること。その違いによって、鑑賞するという行為はどれほど異なるのだろう。
区別? 差別? 特別扱い? それとも 優しさ? 尊敬? 慈しみ?
作家に障がいがあると知ることで生まれる自分の中の変化を、うまく言葉にすることができない。ただ何らかのフィルターが生まれることは間違いない。そして、そのフィルターはなかなか払拭できない。作家が障がいを持つかどうかという情報は、作家自身を深く知りたいのなら役に立つが、作品だけを味わうならば邪魔になるものかもしれない。
だから次回のNO-MA芸術祭は、まずは極力、前情報を入れずに来ようと思う。
(記者:前田達慶)
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【展覧会】「ちかくのまち」
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【アートをきっかけにいろんな感じ方をシェアしよう!】
ボーダレス・エリア近江八幡芸術祭ちかくのまちを翌日に幕を閉じる
11月22日、日曜日の午後、作品の鑑賞会が行われた。
募集の対象者は、発達障害の人、発達障害の傾向があると思う人、長い説明を聞くのが苦手な人、会で意見を言うのを負担に感じる人、この鑑賞会に関心がある人。
進行は、社会福祉法人グローの佐倉さんと石田さん。作品の案内人は、学芸員の横井さん。やさしい作品ガイドが、参加者に配布され、鑑賞会は始まった。
NO-MAでは、まず、自由に鑑賞したのち、横井さんが、解説というスタイル。
参加者それぞれが、気の向くままに鑑賞し、「へぇーおもしろいな。」「これ、何かなぁ。」と、笑顔で作品と対話しているのが印象的だった。
グローのスタッフと参加者が、作品を共に鑑賞するという機会は、双方にとって良き交わりの時であり、新たな気づきや発見があるのが、この鑑賞会の醍醐味である。
横井さんの解説は、とてもかみ砕かれた言葉で、ゆっくりとやわらかい表現で心地良い響き。
本芸術祭に、幾度も足を運んだ筆者にとっても、またあらたな切り口で作品と!
向き合うことができた。
わずかな時間であったが、参加者の方に、米田文作品、赤と白のうずまきさんの前で、話しかけてみた。小さな渦巻状の粘土をくっつけて、さまざまなかたちを表現するのが、米田文スタイル。
「これ、何にみえますか? ニョキニョキと出ている突起は何だろうと見ているんですけど」
ゆっくりと、その女性は話された。「私には、夫婦の天狗のように、見えます。赤と白のペアだし。出ている部分は、鼻みたい。」
なるほど!そうかもと。
学芸員の横井さんが、「その見方、当たっていると言えますよ。」作品名は「はなのながいうずまきさん」だと。
米田文作品を介して、時間を共有できた実感が、心地良かった。
鑑賞会のしめくくりに、振り返りの意見交換の時間が設けられた。
約束事は、3つ。
何を言ってもいい。何も言わなくてもいい。他の人の意見を否定しない。
また、意見の表現方法も参加者が選択。
三色の付箋が用意されていた。
ホワイトボードに貼るが、発表はしない。
貼って、一言発表してもよい。「考え中」と書かれたもの。
参加者の声を抜粋
・いろんな立場の人に向けた工夫がされていて、あたたかいものを感じた。
・3歳の息子と親子でアートを共有できて楽しかった。
特に、奥村邸の庭で、米田文作品に触れながら、「うずまきさん、何にみえる?」
ゆっくり対話できたのがよかった。
・作家と近江八幡の古民家のマリアージュがいい。
言葉にすること以上にインプットされた。
・やさしい解説があるのが、障害を持っている立場からするとありがたいし、一緒に作品について、話ができるスタッフさんがついてくださってより楽しめた。
意見交換の場では、あらかじめ付箋で色分けされているので、安心して、それぞれが思いを綴ることができたのだろう。
この自由さが心地よさとなり、参加者が自分らしく、ありのままで居場所があり、時間を共有できたと感じた。
私達の日常においても、ひとりひとりのペースを尊重される可能性を見出していけば人にやさしく、ボーダレスな社会へと成熟していけるのではないでしょうか。
しめくくりに、グローの横井さんより、芸術祭を通しての思いが述べられた。
鑑賞するって何だろう。
気が滅入ったとき、とりだして触れるということもあるだろう。
武友義樹さんは、いつも、ひもを持って生活をしていた。お風呂にも。
持ち手は、時には、琵琶湖の漂流物。そして、役目を終えた持ち手は、施設の屋根に放り投げられた。
今回は、目の見えない人が、どうやって作品を楽しめるかということに焦点をあて、当時者へのヒアリングをかさね、NO-MAでのレプリカ、触図、アクリル容器に入った素材というかたちでの展示方法にたどりついたのだとか。
鑑賞するということは、ひとりひとりの立場や、状況によって違いはあるけれど、心にそっと寄り添い、作り手の表現を感じて、共有することなのではないでしょうか。
(記者:田中純子)
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【展覧会】「ちかくのまち」
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【ドゥイ・プトロ×ナワ・トゥンガル】
奥村家住宅の奥にある蔵に、ドゥイ・プトロ、ナワ・トゥンガル兄弟の作品が展示されている。
兄のドゥイ・プトロは絵を描く。その多くは、インドネシアの影絵芝居がモティーフになっているそうだ。幼い頃に自分の町へ来たものの、見ることが叶わずいた影絵芝居への憧れの気持ちが彼の制作意欲の源になっているのだろうか。蔵の手前の部屋には、左右の壁とテーブルの上にドゥイ・プトロの絵がずらりと並んでいる。そして奥の部屋には、そんな兄の作品を軸に弟のナワ・トゥンガルが制作した映像作品が上映されている。
その内容は、昨今のコロナの危機を自然界から人間への戒めと受け止め、自然との関わり方を改めるよう訴えかける内容となっているようだ。
映像をじっくりと見ながら、個人の想像もあわせて読み取ったストーリーはこんな感じ。
冒頭に壁面に登場する鳥は幸せに暮らしている人間、家族などを表している。そこにコロナの危機が迫り、鳥は狭い場所へと追いやられていく。その状況を嘆いた画家は、自分の描く絵に登場する戦士で以てその危機を制圧しようとする。画家が空に向かって両手を掲げると、その手に戦士の絵が携えられる。その絵をコロナに侵された壁面の世界に掛けると、世界は無事コロナの危機を脱し、画家は両手の拳を上げて喜ぶが…。ラストにはまたたくさんの鳥の絵が壁面に登場し、平和な世界が戻ってきたようであったが、コロナの危機を脱した後にも、何やら人間同士の抗争でも起こっているかのような場面も登場していた。
“大自然はいつも人間を優しく撫でる”(映像の冒頭に流れる言葉の中から)
(記者:塚本悦子)
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【展覧会】「ちかくのまち」
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【武友義樹さん×福留麻里さん、ヒモとダンスと。】
NO-MAの2階に展示されているのは、武友義樹さんと福留麻里さんのコラボレーション作品である。
武友さんは施設で、丁度良い長さのヒモを手作りし、振り続けている。そんな武友さんを、ダンサー・振付家の福留さんが訪れ、その姿を観察し、言語・身体・道具など様々な方法で交流を試みる中で、2人の姿が1つの作品へと昇華されていった。
会場には3つの映像画面が互いに向かい合うように設置されている。
入口を入った向かいには、大きな画面の中でひたすら自分お手製のヒモを振って楽しむ武友さんの姿が。その画面の中に、時折、武友さんのそばで踊る福留さんの姿も現れる。
左手の画面には、ヒモを制作する武友さんの手もとや、武友さんが振って出来るヒモの形状を現しているのか、カラフルな色鉛筆で何重にも円を描き続けられる映像が流れる。
右手の画面には、福留さんが踊る足元が、その世界観を表す字幕と音声と共に映し出されている。
これら3台の映像画面は、それぞれのパフォーマンスに互いに呼応するかのように、向かい合い、繰り返されていく。
恐らくそれぞれの映像が撮影された場所や時間は別々なのであろうが、これら3台の画面の真ん中に座り、見比べながら鑑賞すると、画面越しの2人のコラボを楽しめる。
(記者:塚本悦子)
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【展覧会】「ちかくのまち」
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【魲万里絵さん×谷澤紗和子さん、の遠隔コラボ。】
奥村家住宅の玄関を入ると、魲万里絵さん制作の人形と谷澤紗和子さん制作の切り絵の可愛らしいセットが左手に出迎えてくれる。家の中へと上がらせていただくと、まずは魲さんの、そして次の部屋には谷澤さんの、それぞれの単独作品が並んでおり、一番奥の部屋には二人のコラボレーション作品が展示されている。
魲さんの絵は、女性の身体のパーツなど刺激的なモティーフが用いられ、各所は色ではなく図柄で塗り込まれている。
谷澤さんの切り絵作品を観て感銘を受けた魲さんからのアプローチをきっかけに、今回のコラボレーション企画が始まったそうだ。企画が実現してからは、互いに文通をするかのように素材となる紙を送り合い、キャッチボールをしながら作品を仕上げていったという。谷澤さんが紙を切り、それを受け取った魲さんがそこに彩色を施す、という風だ。
細かな切り込みが施された作品は、後ろ側からも覗いてみたいと思わされる仕上がりだ。実際、作品の1つ『mask(あなたが〈誰〉でも)』は、鑑賞者が裏側にまわって隙間から顔をのぞかせる、お面の造りになっている。
襖の向こう側、『サークルダンス』という作品がひっそりと展示されている小部屋の中に入ると、暗い部屋の中、後ろから光をあてられた作品の姿が浮かび上がり、畳や襖に影が映し出され、妖しい舞踏の舞台を観に来たかのような雰囲気を味わえた。
(記者:塚本悦子)
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【展覧会】「ちかくのまち」
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【ジャワ島に伝わる厄払い『Ruwat』】
奥村家住宅の奥の蔵座敷では、インドネシアの兄弟ドゥイ・プトロとナワ・トゥンガルの作品が鑑賞できる。
兄のドゥイが描くインドネシアの伝統的な影絵芝居に登場する人形や女性像の絵画作品が美しく展示されている。が、特に目を引くのが正面スクリーンに映る兄弟コラボレーションの映像作品である。
兄のドゥイが描く絵を題材にしてあり、薄暗い蔵の中に浮かび上がる大変色鮮やかな映像の為、ひと目見て帰りたくなるほどだが、蔵座敷の畳の上の居心地の良さそうなクッションに誘われ座って見ていると、映像の力強さにどんどん引き込まれていく。
タイトルの『Ruwat』は、ジャワ島に伝わる厄払いを指しているそうで、この作品には全世界が新型コロナウィルス感染症から解放されることの祈りと希望がこめられている力強い作品だ。
映像の中には防護服をまとった人物も出てくる。
映像の中に出てくる詩にも感銘を受けた。
大自然は求めている。
人間が沈思黙考することを。
御言葉が間違っていたことはない。
ただ、態度を改める必要がある。
[映像の中の詩より]抜粋
映像と詩とを鑑賞して、小さな事ではあるが、まずは地球の一員である自分の態度を改めて考えようと思った。
(記者:林初美)
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【展覧会】「ちかくのまち」
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【西の湖レポート-5】
西の湖は、東に安土山、西に八幡山があり、その間にある。琵琶湖に流れ込む内湖である。
周りに高い建物が無く広い空と湖があり、条件が揃うと素晴らしい夕焼けの望める所でもある。
安土山には我が国で最初の本格的な天主を持った6層建の
信長の安土城があり、絢爛豪華な天主に信長は起居していた
とされる。
築城わずか3年で焼失したのは残念ではあるが、信長も天主から八幡山に沈む夕日を堪能していたに違いない。
雄大な夕日を信長と共有していると思うと歴史を超越したロマンを感じさせてくれる。
天下布武を夢見た信長ではあるが、今、西の湖で高校生達が日本一をめざして夕日が落ちても練習を続けている。清々しさを感じさせてくれる。
(記者:竹間義昭)
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【展覧会】「ちかくのまち」
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【西の湖レポートー4】
幻のインスタレーション
西の湖に流れ込む水を自然の力で浄化させているよしきり池の
回りを使ったインスタレーションの作品が幻になった。
岩手の坂本三次郎が70 歳頃から、施設周りにある素材を拾い集め
並べ置きはじめ、亡くなるまで続けた。
その行為を、「ちかくのまち」展で京都の作家椎原 保が
坂本になりきってよしきり池の回りで表現した。
しかし、導線上の問題で撤収された。
撤収前、ある意味貴重な作品群がこの写真だ。
Installation :
インスタレーション
特定の空間や室内に、作家がその空間にオブジェや装置を置いて構成。
作品として観る人に体験させる芸術活動。
(記者:竹間義昭)
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【展覧会】「ちかくのまち」
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【ヒラトモさんとめぐる!ぐるり町歩き】
「ちかくのまち」関連イベント「ヒラトモさんとめぐる!ぐるり町歩き」が11月1日(日)に開催されました。
10:00にNO-MA集合、10:30開始でしたが、ヒラトモさん(平野智之さん)が家族と到着すると、そのまま10:30を待たずにヒラトモさんが興味を持った作品の鑑賞会が始まりました。
参加者は一般、ヒラトモさんと家族、NO-MA関係者(双子の赤ちゃんも参加)です。
ヒラトモさんや参加者は美保さんガイドを首からさげて回ります。
ヤマガミユキヒロさんの作品を観て、どこの電車でどこの町か、東京の人で電車の好きなヒラトモさんには、すぐに分かりました。
そしてヒラトモさんは、二階で自分の作品の音声ガイドを聞きながら作品を観賞し、4枚のフランス料理のカードを床に並べ、裏に建物や車の絵を張り、お土産として配ってくれました。(記者は残念ながら選に漏れました)張り合わせる組み合わせは決まっているそうです。
奥村家住宅でも、音声ガイドを聞いて観賞。
米田文さんの「うずまきさん」は「中華麺のどんぶりの柄」。
蔵は「くつを脱いで入る、脱ぎ侵入」ヒラトモさん語録です。
その後、町に出て、ヒラトモさんの行きたい所をめぐります。美保さんの音声ガイドがあるお店をみつけ、ガイドの靴マークにタッチして解説を丁寧に聞いて行きます。
アンドリュース記念館にも音声ガイドがありますが、開館が12:00でまだ看板も出ていません。
次に行こうと、隣の近江八幡教会に寄り、中に入らせていただきました。
(祭壇に置かれていた聖書は「結婚の報告書」ヒラトモさん語録)
そして堀の方へ行き、音声ガイドの置いてある店を回り、ヒラヒトさんと同じ様に音声ガイドを聞きます。
こんなにたくさんのお店にガイドがあったのかと初めて気づきました。
そして12:00頃アンドリュース記念館に戻って来ると、丁度開店準備が始まり、音声ガイドの看板が外に出されました。
みんな「開いた!」「出た!」と大喜び。
ガイドにタッチしてアンドリュース記念館の中に。
最後にアンドリュース記念館の前で記念撮影をして解散になりました。
1時間半の町歩きでしたが、みんな終始笑顔で、楽しい時間を過ごしました。
(記者:羽者家さおり)
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【展覧会】「ちかくのまち」
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【よしきりの池のあたりで】
よしきりの池の回りはヨシがたくさん繁っています。
そのヨシに三方を囲まれた空間に、ひとつ置かれた武友義樹さんの壺。背よりも高いヨシで周りの景色は見えません。空だけ。
壺と自分だけの空間。
雑音も消えた様です。
池の中の久保寛子さんの作品の青い顔は、以前来た時は波があり、青い顔だけ水面に浮いて見えました。
今日は風も波もなく、水面に青い顔が綺麗に映っていました。顔が空中に浮かんでいるよう。不思議な感覚です。
じっと観ていると時間を忘れます。
坂本三次郎さんの写真を見ながら池の回りを歩き、椎原保さんが再現した作品を観ると、日が暮れるまで遊んだ子供の頃のことを思い出します。
これは参加型の展示なので、自由に石や枝を並べられます。
屋外の展示は天気や時間によって見え方、感じ方が全然違います。
何度も通いたくなる場所です。
(記者:羽者家さおり)
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【展覧会】「ちかくのまち」
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【美保さんと雨の日にめぐるちかくのまち~その⑦~】
[よしきりの池]
美保さんのレインコート姿を見たかったとともに、
雨の日の屋外展示作品を見たいとも考えていました。
雨は、作品を野性的に見せていました。
それなのに、つい傘をおサルさんに傾けていました。
おサルさんは、ネットでできているため、雨は通過。傘は必要ありません。
こういうのをおせっかいっていうのだろな。と日ごろの行いを反省しながら、写真を撮りました。
(記者:寺本ありさ)
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【展覧会】「ちかくのまち」
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【美保さんと雨の日にめぐるちかくのまち~その⑥~】
電車で、近江八幡から安土駅へ。
安土駅を出てすぐ真正面に見えるのが、「万吾樓」の看板。
明治43年(1910年)創業の和菓子屋さんで「ちかくのまち」の協力店です。
入店しますと、お店の方がすぐに「点字メニュー」と「やさしいメニュー」を持ってきてくださいました。「どういうシステム?」と思っていますと、「美保さんをお持ちなので、メニューがご必要かと…」とやさしい心遣い。「やさしいメニュー」をじっくり見させていただきました。
「やさしい」の名前の通り、読みやすいフォント、ゆったりした行間、わかりやすい商品説明と、「優しい」&「易しい」。
ふと、店奥を見ると、貫禄ある菓子木型がずらり。
人の手、材料、時間など、さまざまな条件が合わさって、こんな色が出るのだろうなと鑑賞。
一方、店外の休憩所には、新鮮、ピチピチなばったり床几と美保さんガイドボード。
新旧を感じる刺激的な万吾樓さんでした。
[徒歩で安土会場へ]
歩きながら、「ちかく(知覚)」には、五感の他に「時間知覚も入れることにしよう。」と自分勝手な法則をつくったり、「時間(経過)といえば杉浦篤さんの作品だなぁ」と思い起こしたりと、「ちかくのまち」の「ちかく(知覚、近く…)」についてふわふわと考えながら、安土会場へ向かいました。
(晴れの日は、安土駅前のレンタサイクルを利用される方が多いとのことです。)
*「点字メニュー」「やさしいメニュー」は、協力商店とNO-MAの共作で、各協力商店それぞれに設置されています。
(記者:寺本ありさ)
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【展覧会】「ちかくのまち」
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【美保さんと雨の日にめぐるちかくのまち~その⑤~】
[お昼ごはんは、「食堂ヤポネシア」さんへ]
お腹がすきました。
お昼ごはんは、「食堂ヤポネシア」さんへ。
バラエティに富んだランチメニューで、なかなか決められませんでした。
考えた末に、「今まで一度も食べたことがない」という理由で、「ブラックバスのパン粉焼き」に決定。
黒くて、脂っぽく、匂いが強いと勝手にイメージしていましたが、見てびっくり、食べてびっくり。
白身!淡泊!
「どんな色にも染まりますよ」的なおさかなでした。
お店を後に、傘をさし、近江八幡駅へ向かいました。
(記者:寺本ありさ)
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【展覧会】「ちかくのまち」
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【美保さんと雨の日にめぐるちかくのまち~その④~】
[NO-MAから奥村家住宅へ]
外は、本降り状態でしたので、美保さん専用のレインコートをお借りしました。「このレインコートは、手作りで、昨年度からあったのよ」と会場ボランティアさん。
[奥村家到着]
奥村家住宅にも飛び出し坊や・とび太くんがいました。
気になるのは、吹き出しの「まっせ」
「まっせ」は、近江八幡で毎年3月に開催される左義長まつりでの山車のかけ声のことだと、ここでも会場ボランティアの方に教えていただきました。
[谷澤紗和子さんの「NO」]
「NO」って、あまり使ってないな。年のせいかな…と思いながら見る谷澤紗和子さんの「NO」
オノ・ヨーコさんの、脚立に上って虫眼鏡で見る《天井の絵/イエス(YES)・ペインティング》を引用した作品だそうです。
自分が「NO」を言わないだけでなく、「NO」と言われることも減ったような気がします。
自分で「NO」になりそうな状況を回避しているのか。
周りが気をつかってくれているのか。
「Yes」よりも、言いにくい「NO」
帰宅後、いざというときに発せられるよう、いろんな「NO」を声に出して練習しました。
(記者:寺本ありさ)
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【展覧会】「ちかくのまち」
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【第2回ボーダレス・エリア近江八幡アカデミー】
10月25日(日)近江八幡市文化会館にて、第2回となるボーダレスエリア近江八幡アカデミーが開催されました。
一・二限は講演形式、三限はフリーディスカッション形式で行われました。
一限目は「障害のある人と一緒に作品を作る 〜武友義樹×福留麻里の共働」。本展にて武友義樹さんとのコラボレーション作品を展示されているダンサーの福留麻里さんと西川賢司さん(社福グロー法人本部企画事業部文化芸術推進課長)の対談でした。福留さんが、言語でのコミュニケーションがとりにくい武友さんと交流する過程で取り組んだこと、感じたことを話してくださいました。
二限目は「ちかくのまちの作り方」。本展において、美保さんガイドやリープモーションなどの技術面で関わられた林ケイタさん(株式会社デンキトンボ代表)、会場の空間デザインを担当された安川雄基さん(合同会社アトリエカフエ代表)、NO-MA主任学芸員の横井悠さんの3名の対談。写真そのものである杉浦篤さんの作品を盲ろうの方に鑑賞してもらうための工夫について、それぞれの立場からお話をいただきました。
三限目は、一、二限目の全登壇者と、会場に来られた約12名の参加者で「ザ・ノンテーマ・ディスカッション!」。盛り上がった話題は、作家本人がアートだと認識していない作品の展示について。本展では、杉浦篤さんの写真や、坂本三次郎さんのインスタレーション、武友義樹さんの壺などがそれに該当します。これらはアート作品だと言えるのでしょうか。以前は「作品だと言えない」という声が大きかったという話が聴衆からありましたが、学芸員の横井さんは現在はこれらを作品として肯定する動きが大きくなっていると話されました。
そして、このような作品を展示することは非常に悩ましい作業だと分かりました。展示方法は展示者に委ねられます。展示者の意図に縛られず、作品そのものが放つエネルギーをまっすぐに伝えるにはどのように展示すべきなのでしょうか。横井さんのお話からは、展示方法に関する学芸員の深い洞察が伝わってきました。
展示を通して、私たちは作品から伝わってくるものだけを味わおうとするのか、作家の意図を読み取ろうとするのか、それとも作家自身を知ろうとするのか。鑑賞という行為そのものの奥深さを考えさせられた時間でした。
(記者:前田達慶)
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【展覧会】「ちかくのまち」
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【『無視覚流』でめぐる!ぐるり町歩き会―③町歩き編】
アイマスクをして外へ歩き出す時、まず最初に感じた事は、「こわい」。
足の裏に感じる、今その瞬間自分が踏みしめている地面の様子しか分からない。一歩先には何か障害物があったり穴があったりするのではないかと思うと、そろりそろりとすり足で進みたくなってしまう。案内役の腕に掴まり、一緒に歩いているうちに少しずつ慣れていったが、相変わらず自分では足元以外の様子は分からない。途中立ち寄った店の中で、不意に自分の鞄がガラス窓に触れて「ガシャン」と音がなった時にはヒヤリとした。
町歩きの途中、私の案内役が散歩中の犬を見つけ、その犬の品種名を教えてくれた。聞き慣れない名前だったので、「どんな犬ですか?」と尋ねると、「白くて大きくて細い、高級そうな犬です。」との答え。思わず、「え!見たい!」と言ってしまったが、そこは案内役の言葉を頼りに、一人想像してわくわくするしかなかった。
一方、案内役の方にもまた別の緊張感があった。まず案内役として、道中、相手の身の安全を確保しながら進まなければならないし、それと同時に、周りの景色や出来事をできるだけ言葉で伝えてあげたいとも思う。しかしこの2つを同時にこなすのは、慣れていないとなかなか難しいと感じた。
『無視覚流』に慣れている先生や参加者の男性の一人は先頭を切ってすいすいと進んでいかれ、鳥居の柱や灯籠など興味をひかれる物に出くわすと、それに触れたり白杖で「コンコン」と叩いて大きさや音を確かめたりしながら、積極的に楽しまれていた。
(記者:塚本悦子)
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【展覧会】「ちかくのまち」
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【『無視覚流』でめぐる!ぐるり町歩き会―②芸術鑑賞編】
まずはウォーミングアップとして、NO-MA1階にある2つの展示作品を鑑賞した。
1つ目の作品は、杉浦篤さんが大切に触れてきた写真である。視覚に障害のある人も鑑賞できる工夫として、触れるレプリカや触図、風景の中に出てくる素材なども併設されている。参加者はそれぞれ、作品を見たり、触ったりしながら、意見を交換した。視覚に障害のある参加者の感想からは、芸術鑑賞をサポートする側として参考になる気づきも得られた。例えば触図。手で触れて写真の中の風景をイメージする触図の上では遠近感はなく、全ての情報が平面的に受け取られるそうだ。その為、人の頭の大小で近くの人、遠くの人が表されていたものも、ただ大きい人、小さい人、としか読み取られなかった。この作品は、写真に写る景色を想像するよりも、杉浦さんの愛着とともに変形した写真の輪郭を感じて楽しむ作品なのかもしれない、との意見も出た。工夫されていると思われた鑑賞サポートツールが、実際には意図とは違う捉え方をされる事もあるようだ。
私が目を閉じて触図に触れる時には片手の指先でなぞるだけだったが、慣れている方は両手を手のひらまで使って撫でるように触れて、全体像をつかもうとされているのも印象的であった。
2つ目のヤマガミユキヒロさんの作品は、絵と映像、音声のコラボレーションである。この作品は、案内役が作品の内容を言葉で説明して伝え、アイマスクをして視覚をなくした方は、その説明を頼りに作品の姿を想像して楽しむ、という方法で鑑賞した。言葉だけで全てを伝えるというのは、実際にやってみると想像以上に難しかった。客観的な情報を伝えるつもりが、これが芸術鑑賞であるが故なのか、個人が受けた印象もだんだんと説明の中に含まれてくる。しかし、なんとか言葉で最大限伝えようとするうちに、いつもより細かな所にまで気がついたり、自分の鑑賞スタイルを改めて意識したりもした。案内役としても、新たな鑑賞方法を発見したような、そんな新鮮な感覚で楽しめた。 (―③町歩き編へ続く)
(記者:塚本悦子)
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【展覧会】「ちかくのまち」
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【『無視覚流』でめぐる!ぐるり町歩き会―①『無視覚流』の楽しみ方。】
10月18日(日)午後から開催された、『無視覚流』でめぐる!ぐるり町歩き会に参加した。講師の広瀬浩二郎先生の案内のもと、大阪や和歌山など遠方からも集まった参加者と共に、『無視覚流』の芸術鑑賞と近江八幡の町歩きを楽しんだ。
参加者はペアを組み、交互にアイマスクを着けて『無視覚流』の活動を体験した。マスクを着けていない方は、言葉や身体を使ってペアの相手を道中導く案内役となった。
先生曰く、『無視覚流』での活動には普段とは違うポイントがいくつか出てくる。まず、視覚をなくした方は足の裏に感じる地面の触感や耳に入ってくる環境音、匂いなど、目以外で受ける刺激の感覚が冴えてくる。そして案内役の方は、あらゆる場面で必然的に言葉での説明が多くなる。今回のイベントは、これらを実践的に体感できる内容となっていた。
イベントの概要の説明を受けた後、まずはウォーミングアップとして、NO-MAの展示作品を鑑賞する流れとなった。NO-MAの建物へ入る瞬間、参加者の一人で視覚に障害のある男性が、「木の匂いがしますね」と口にされた。木造の建物の匂いを感じ取られたようだ。思わず自分も確かめたくなり、マスクをずらして鼻の感覚を研ぎ澄ませてみた。すると、普段は意識していなかったのだが、その気になると確かに私にもふわりと木の匂いを感じ取る事ができた。 (―②芸術鑑賞編へ続く)
(記者:塚本悦子)
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【展覧会】「ちかくのまち」
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【同じ時の流れる風景。】
ヤマガミユキヒロさんの作品は、絵と映像のコラボレーションだ。選び抜いたロケーションの瞬間を切り取った絵の上に、同じ視点から撮影した映像を重ねることで、時の流れをつくりだす。そして今回は初の試みとして、そこに音声も合わせている。
会場の壁には鉛筆描きのドローイングが11枚掲げられている。描かれている場所は様々で、制作の年度も異なるようだ。だが後ろへ下がって全体を眺めてみると、11枚、どの風景にも同じ時間が流れているという事に気がつく。11枚の風景一斉に朝陽があたり、日中の賑やかな空気が流れ、日が暮れ、夜が訪れ月がのぼる。場所は違うが同じ時間が流れ、また同じサイクルを次の日も繰り返していく。
街中の風景画には、建物や道路など、固定されて動きの無い物が鉛筆描きで捉えられており、投影される映像の中に1日の人の流れや街灯、電光看板の光の移り変わりなどが映し出される。
京都深泥池の風景画には一本の樹が描かれているが、近づいて見てみると実は葉は描かれておらず、投影される映像で風に揺らぐ葉の姿が加わり、景色が完成するようだ。
11枚の風景の移り変わりを同時に眺める贅沢を味わったり、1枚1枚の絵に近づいてじっくりと観察したり、少し離れて全体像を見てみたり。発見がいっぱいで、観る人それぞれの楽しみ方ができる作品となっている。
(記者:塚本悦子)
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【展覧会】「ちかくのまち」
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【美保さんと雨の日にめぐるちかくのまち~その③~】
その②と同じく、今回も展示空間についてのお話です。
[ 気になる机、テレビ台… ]
美保さんの生みの親の平野智之さんの展示エリアは、洋服や雑貨を取り扱っているおしゃれなブティックのような雰囲気です。
すっきりした印象を持つのは、美保さんの服の青とテレビ台や机のグレーの影響でしょうか。
このグレーの部分ですが、近づくと凸凹していて、左官技法で仕上げられていることがわかります。
絵画展で、装飾された額縁を作品と同時に鑑賞することはよくありますが、展示台が気になったのは初めてです。展示台製作の様子を想像し、展覧会は、さまざまな役割の、多くの人によってつくられていることを再認識しました。
*美保さんガイドの看板、記者クラブTOPICSボードなども凸凹しています。
*凸凹していないものもあります。
(記者:寺本ありさ)
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【展覧会】「ちかくのまち」
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【可愛いお客様】
午後から雨が降るという予報のある日、妊婦のお母さんと可愛い女の子が、B&G海洋センターの小西節雄氏の作品≪カカシ≫を観に来てくれました。
声をかけると恥ずかしそうにお母さんの後ろに隠れる女の子でしたが、カカシとは仲良くお話していました。
よしきりの池も見て、疲れてお腹も空いたのか、ばったり床几に座っておやつタイム。カカシが羨ましく思っている様に見えました。
帰りには2歳と教えてくれ、バイバイと手を振って挨拶して元気に帰っていかれました。
そのあとまもなく雨が降ってきましたが、雨も可愛いお客様の観賞が終わるのを待っていてくれた様です。
(記者:林初美)
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【展覧会】「ちかくのまち」
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【美保さんと雨の日にめぐるちかくのまち~その②~】
「ちかくのまち」が始まって、3回目のNO-MA訪問です。
[ 存在感のあるケーブル ]
武友義樹さん×福留麻里さんの展示エリアを「線とまるとしかくの部屋」と自分勝手に命名したくらいこの展示空間が好きです。理由のひとつは、電線ケーブルの存在。一般的には、数本まとめてテープでぐるぐる巻きにされたり、物陰に隠されたりといった扱われ方をするケーブルですが、ここでは違います。
一本一本が独立。しかも、色は強気の黄、白、黒。
長さ調整は、ヘビのとぐろ方式で数か所に出現。
福留さんの遊び心?
実はすごく計算されている?
作品になりたいケーブルの気持ちを表している?
福留さんに質問すると「たまたまあったケーブルが、この色でこの長さだっただけですよ。」と返ってくるかもしれません。
本当はどうなのか知りたい。でもこのままひとりで想像遊びをしていたい気持ちもある。
ということで、「会期終わりくらいに機会があればきいてみる」ことに決めました。
*取材日は、2020/10/17。
(記者:寺本ありさ)
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【展覧会】「ちかくのまち」
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「万里絵さん」と
「たえちゃん」
10月30日午後の奥村邸。
万里絵さんの作品はよく見に行っているという愛知から来られた女性が、お友達と二人で美保さんガイドとともに鑑賞されていた。帰りにコラボ作品の前で記念撮影。すると美保さん人形の横にもう1人美保さんの妹?子ども?のような人(形)影が…。「たえちゃんも一緒に撮ろう」と、とても自然にかばんから取り出しておられた。
万里絵さん発案の写真スポットを伝えるとそこでも記念撮影。万里絵さんが発案したということに「すごいなぁ」と驚かれ、「友達は、今日初めて万里絵さんの作品を見て“うっ”と衝撃を受けていたけど、私は鋏がなくなっていて、万里絵さんひと皮向けたなぁって思ったんです」と話して下った。
気になっていた「たえちゃん」と呼ばれていたお人形のことを聞くと、「たえちゃんは、亡くなった私の子です。うちの子も同じような感じで、生きていたら、こんなことさせたかったなと思って…。」と万里絵さんの作品を見上げられた。記事にしても良いかを尋ねると「この子も喜ぶと思うので」と。
そして、美保さんガイドと「たえちゃん」と共に安土会場に向かわれた。
(記者:深田みどり)
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【展覧会】「ちかくのまち」
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芸術祭「ちかくのまち」の楽しみ方-その3の2-
奥村邸の蔵には、「ドゥイ・プトロ×ナワ・トゥンガル」さんの作品がある。多くの人は、その色鮮やかな作品に注目すると思うが、どうしてもモノクロの作品に目が向いてしまう。そのひよこたちを見た時にとても懐かしく思ったのだ。無性に懐かしいが、それが何故だか思いだそうとしても思い出せない…。あれ?このフレーズは…と2019年のNO-MAの企画展「忘れようとしても思い出せない」を思い出した?!その企画展のトークイベントで作家である田口ランディ氏が出展作品の西村一幸さんの「ピラカンサ」についてこう話された。「表現と記憶は深く関わっている。人が意識しない部分にまで潜って記憶とアクセスする表現者は素晴らしい」(注:あくまでも個人の解釈です。どうもすみません)
で、“ドゥイ・プトロさんのひよこの作品はどうやら、自分の意識の奥底の記憶とアクセスしているらしい、きっと”と思い出すのをやめることにした(単純です)。
自分の心を動かしたものの正体をちょっと鮮明にしたくなったら、NO-MAの関連イベントおすすめです!
(記者:深田みどり)
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【展覧会】「ちかくのまち」
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芸術祭「ちかくのまち」の楽しみ方 -その3-
アートのことは全く詳しくない。でも2014年の「アールブ・リュット☆アート☆日本」展(ボーダレス・アートミュージアムNO-MAほか)に初めて足を運んで以来、数々のNO-MAの展覧会や関連イベントで、たいそう楽しませてもらっている。
今回の芸術祭に出展されている作品を見て過去の作品を思い出すことがあった。
ひとつは、よしきりの池の「坂本三次郎×椎原保」作品。その場でよみがえってきたのは、2014年展示していた今村花子さんの作品だ。それは、花子さんが毎回の食事の食べ物を並べた跡を母が写真に撮った作品だ。“ん…?ア、アート?”と思うと同時に“もう、またこんなことして!と雑巾を手に取らず、カメラを手にしたお母さんはすごい!”と思った。そして何だかもやっとしてその場を後にしたのを覚えている。
そのもやっとしたものが、この10月27日に開催された「ボーダーレス・エリア近江八幡アカデミー」に参加したことで、少し晴れてきた。(YouTubeでライブ配信されました。様々な分野で活躍されている方のいろいろな視点からの話が聞けました)“そうか、私はあの時『無意識のコラボレーション』というものに心を動かされたのだ、きっと”と思った。で、今回の「坂本三次郎×椎原保」作品。坂本さんと職員さんの無意識のコラボレーションの産物の写真がある。それを見たり、職員さんの話を聞いたりしながら椎原さんは、「風景の中に場所づくりをしている」「見つけたものと関係性をつけていく」と坂本さんの行為を言語化し、なおかつ「何も考えず、坂本さんになりきってやっている」と話される。(ボランティアの事前研修会で)
何か不思議な感じだ。またもやっとしてくる。人の手によって幾重にも層ができる感じだ。
もうひとつ気になる作品が、奥村家の蔵にあった。その3の2に続く。
(記者:深田みどり)
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【展覧会】「ちかくのまち」
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芸術祭「ちかくのまち」の楽しみ方-その2-
今年の芸術祭は、近江八幡市内と少し離れた西の湖のほとりの安土会場の2ヶ所で行われている。コロナ禍であることも考慮して、屋外展示を考えたとのことだ。ボランティアの事前研修会で安土会場を訪れた時から、ひとつの疑問がわき起こっていた。「NO-MAに車で来場された方には案内できるけど、それ以外の方にはどうやって案内したら良いのだろう?」…。
ということで?!芸術祭「ちかくのまち」をサイクリングしてみた。
近江八幡駅前の駅リンくんで借りた自転車で出発。
まずNO-MAからバス通りに出て、近江八幡では、お馴染みのお店や看板(①②③)を見ながら琵琶湖の方に向かって走ります。ラコリーナ前のバス停を右に入ります④。しばらく道なりに走ります。ファームが拡がります。グランドらしきものが近づいてくると広い道に出ます。そこを左にいくと「ぐるっときぬがさコース」が現れます。こんな景色⑤とこんなマーク⑥。そこからAコースとBコース(勝手に名付けてます)に分かれます。まずは、Aコースを行きます。マークを目印にひたすら琵琶湖に向かって走ります。白王橋を渡ります⑦。そこからヨシ群落⑧を右に見ながら大中の信号を目指して走ります。まだ?と不安になりますが、牛さんの匂いがしてきたらもうすぐそこです。大中の信号を右に曲がって少し進み「ぐるっときぬがさコース」の看板⑨がある小道に入ります。しばらくすると見えてきました。「坂本三次郎×椎原保」作品⑩や「久保寛子」さんのトビに「武友義樹」さんの壺が⑪。いつもより増して、自然に溶け込んでます。小西さんのかかしたちも熱烈歓迎してくれています⑫。帰り道ではこんな素敵な風景にも出逢えました⑬。
芸術祭「ちかくのまち」の楽しみ方-その2の2-
今回はBコースを走ります。Aコースと反対の方向に行くと⑭、びわ湖よし笛ロードにつながります⑮。湖岸緑地西之湖園地では、野鳥?を撮っておられる方も数名おられました。こんなのどかな風景に出逢います⑯⑰。よし笛ロードが終わり、県道511に出ると後は、車での道のりと同じです。
AコースとBコースで西の湖を一周したことになります。どちらもNO-MAから1時間弱(Bコースの方が近いです)ですが、さすがに近江八幡駅まで戻った時には、足がプルプルに。次回から、NO-MAより離れた所に展示会場を設置する場合はNO-MAにレンタルできる電動自転車を置いてもらえると助かります…と、アンケートには書いておこう。
(記者:深田みどり)
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【展覧会】「ちかくのまち」
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【美保さんと雨の日にめぐるちかくのまち~その①~】
美保さんのレインコート姿を拝見したくて、雨の日にNO-MAへ。
前回は、自転車で近江八幡と安土エリアをめぐりましたが、今回は安土まではJRを利用。
それぞれの駅から会場の往復は徒歩で移動しました。
[NO-MA開館時間まで]
近江八幡エリアは、碁盤目状の街並みになっていて、方角がわかりやすいうえに、時々出会う立札がとても役立ちます。立札には、まちの説明と地図が表記されていて、「道に迷うのは日常茶飯事」の記者でも、スマホ無用で、安心してまち歩きができました。
NO-MA開館まで、時間がありましたので、「どこかでコーヒーを‥」とキョロキョロしていたところ、開店準備が終わったところっぽい店員さんに、やさしく声をかけていただき、「明治橋 あまな」さんに入りました。
偶然にも美保さんがガイドをしてくださるお店。
あまなさんは、カフェとしても、鰻料理店としてもご利用していただけます。
あまなさんの店前にいたのは、滋賀県生まれの飛び出し坊や・とび太くんのうなぎを持っているバージョン。とび太くんは、いくつかタイプがあります。「とび太くんみつけ」をしながら、NO-MAに向いました。
その②に続きます。
(記者:寺本ありさ)
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【展覧会】「ちかくのまち」
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【美保さんと自転車でめぐるちかくのまち~その⑥~】
武友義樹さんの作品に、ハエが止まっていました。
武友さんのもりもりした肌色の作品と黒のハエ。
作品からなかなか離れないハエを、美保さんと眺めておりました。
もちろん、ハエは飛んで行ったのですが、ハエに替わって今度は自分が作品から離れられなくなっていました。
武友さんのチカラ、作品からのチカラ、開放的、圧倒的、あからさま、入ってくるもの、降り注ぐもの、自分から出ていくもの…
混乱したのか、しばらく、ぼーっとしていたようです。
作品と、美保さんと記者の影を一緒に撮ってみました。撮影時には気付きませんでしたが、後で見ると影が3人家族のよう。
会場では、影撮りも楽しみました。
美保さんとは、この会場でお別れ。
自転車で、近江八幡駅まで帰りました。
(記者:寺本ありさ)
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【展覧会】「ちかくのまち」
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杉浦 篤さんにとって、写真は、タイムマシーン?
セピア色のやわらかな風合いの写真。かたちはさまざま。
どこかなつかしいような、
やさしい気持ちになる。
大切な人、思い出、場所。
杉浦さんは、見るだけでなく、触れて、想像の翼を広げて、写真のシーンに入り、
会話をしていたのではと。
お母さんとの思い出。
施設の仲間との海水浴。
杉浦さんは行ったことはないけれど、お母さんが海外旅行時に撮った家、海外に訪れて撮った家のある風景などなど
写真に触れることで、杉浦さんには、におい、風、光、波、声を体感できているのではないか。
写真のなかの世界に存在する自分を、日常のなかで、楽しみ、愛おしい時間を
過ごしていた軌跡が見て取れた。
愛おしいから、触れる。写真は、時間と被写体との対話のなかで、やわらかな
杉浦カラーに染められていく。
写真は、見て、飾って、思い出をそのままで記録として、取っておくという概念にとらわれていたが、それだけではない。
杉浦さんの写真は、セピア色で、折れたり、角がとれて丸くなったり、擦り切れたり。
何度も読み返された絵本のように。
杉浦さんは、深く写真と対話していたのだと。その思いに愛おしさを感じた。
鑑賞サポートツールのここが凄い!
NPO法人しが盲ろう者友の会の協力のもと、社会福祉法人グローのスタッフが
当事者と支援者へのヒアリングを実施して、できあがったアイデアの賜物!
杉浦篤さんの写真を盲ろうの人や視覚に障害がある人も楽しめる工夫
1. アクリルの容器に入った素材
写真のなかの素材を展示・触ってみる
森の中の落ち葉やどんぐりの入ったケース
触りながら、視覚の障害の有無にかかわらず、杉浦さんの世界が体験できる!
森のなかで木の葉とたわむれていた子供のころを思い出した。
2. 写真の拡大映像テクノロジー
非接触型で手をかざすと写真の拡大映像がスクリーンに!
弱視の人に見やすくということで、開発されたそうだが、
見える人にも細部にわたり見えるのでこれは写真の展示には今後も活躍しそう!
実際に手をかざしてみたが、センサーがどこで反応するのかを捉えるまでは、思い通りには操作できない。不自由さのゆえに、時間をかけて向き合えることもある。何度も繰りかえすうちに、ランダムに映し出される写真に夢中になり、拡大、拡大、
そして次の写真と、杉浦ワールドに魅了された。
(記者:田中純子)
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【展覧会】「ちかくのまち」
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【芸術祭「ちかくのまち」の楽しみ方 -その1-】
10月13日、友人とB&G海洋センターを訪れた時のこと。
「ちょっと、写真撮って!クイズ私は何処でしょう?ってやるから」と叫びながら、小西節雄さんの作品のカカシたちに向かって友人が走って行った。
なるほど、そういう楽しみ方があったかと感心した。スクープ写真も撮りました。熱愛発覚⁉です。
「そうそう、人生楽しまなくては!」と小西さんが、いえいえカカシたちがささやいているようでした。
(記者:深田みどり)
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【展覧会】「ちかくのまち」
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【美保さんと自転車でめぐる「ちかくのまち」~その⑤~】
B&G海洋センターでは、小西節雄さんのカカシが屋外展示されています。
「カカシ」といっても、ゲートボールをしているカカシ、はしごに上って木の手入れをしているカカシ、魚釣り中のカカシなど、何かをしているカカシたちです。
記者よりも、年齢が高い方々を呼び捨てするのは、気が引けますので、これ以降は「カカシさん」と呼ばせていただきます。
伺った日は、草刈り機の音がブーンと休むことなく響いていました。草刈りをしているカカシさんのための演出かと思い、会場ボランティアの方に確認すると、「いえいえ、本当に(人が)草を刈っているのよ。」と笑って教えてくださいました。
ベンチに座りスマホを操作するカカシさんがおられたので、「今の時代を表しているなぁ」とカメラで撮ろうとしましたら、カカシさんがすっと立たれるではありませんか。
「人」でした。
もし、動かないままでしたら気づかずに、「スマホを操作するカカシさん」として、この記事に載せていたかもしれません。
別の場所では、湖をみつめるふたりのカカシさんがいました。「仲が良さそうだな」と撮ったのですが、うちひとりは、「人」でした。でも、もう、どれがカカシさんで、どれが人か。なんてどうでもよくなっていました。
カカシさんたちと音、影、風…などが影響しあって、よく目にする光景に見えたり、懐かしさを感じたり、これからの自分を想像したりしました。
昨日から少し、寒くなってきました。
カカシさんたちが、風邪をひいていないか心配です。
その⑥に続きます。
(記者:寺本ありさ)
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【展覧会】「ちかくのまち」
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【美保さんと自転車でめぐる「ちかくのまち」~その④~】
奥村家住宅を出ると、とたんにお腹がすいてきました。美保さんには自転車のかごの中で座っていただき、「安心してまちをめぐれるNO-MA周辺マップ」を手に、自転車を押しながら昼食先探し。周辺マップには、和食店、カフェ、和菓子店など10店舗が紹介されています。お子様連れOK、多目的トイレあり、点字メニューありなどバリアフリー等情報も掲載されています。
店前のクレープの絵と「美保さんガイド看板」に目がとまり、Kolmio(こるみお)さんに入りました。近江牛ハンバーグランチをいただき、味覚も満足。
自転車で安土エリアへ向かいました。
風が強くてくじけそうになった直線ゾーンがありましたが、途中の自転車道(びわ湖よし笛ロード)では、気持ちよく走ることができました。
Kolmoさんを出発してから約40分後、B&G海洋センター・よしきりの池に到着。
*自転車での移動は、体力に自信のある方向きです。
その⑤に続きます。
(記者:寺本ありさ)
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【展覧会】「ちかくのまち」
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【思いを馳せる】
坂本三次郎さんは、暮らしていた福祉施設の周辺から集めてきた材料を施設の敷地内に並べていた。現在は片付けられ、或いは朽ちてしまい、今はもう遺されてはいない。
今回のよしきりの池での展示は、坂本さんのその行為で出来上がった作品になるべく近いものを再現する、という形で椎原保さんの手によってつくられた。
とは言え、材料はあくまで周りの環境にあるものである為、完全な再現にはならないのだと言う。例えば琵琶湖の畔にある今回の会場付近には、波に揺られて来たのか丸みのある木も多く集まるが、坂本さんの当時の作品にはそれはあまり見られない。これは、つくる環境で変わる作品なのである。
坂本さんの当時の制作意図は、想像するしかないらしい。施設の職員も、畑を作っているのではないか、結界なのでは、などとそれぞれに推察していたそうだ。
会場を取り囲む様に、坂本さんの作品の写真と共に、施設で制作する坂本さんの姿をとらえた写真も展示されている。それを覗き込むと、背景に田んぼやよしきりの池が見える景色の中に坂本さんが居る様で、「もしも坂本さんが今この琵琶湖の畔で制作をしていたら、どんな作品が出来上がっていたのだろう」と想像してしまう。
(記者:塚本悦子)
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【展覧会】「ちかくのまち」
http://www.no-ma.jp/town_of_perception
【手で観る、感じる】
芸術祭「ちかくのまち」には、手で観て感じて楽しめる作品や工夫がある。
NO-MAの入口すぐに展示されている杉浦篤さんの作品。杉浦さんが長い年月持ち歩き、触ってきた写真である。
「“触ってきた写真”が作品?」と思われるかも知れない。でもこれらの写真は、もしも杉浦さんが長い間、ただ大事に眺めていただけなら生まれなかっただろう形、色になっているし、今回提案されている、触れて形状を確認するという鑑賞方法も出ては来なかったと思う。
会場には、写真の擦り切れや角の丸みを再現したレプリカの他、被写体の形状を表した触図、写真の中の風景にある自然物のサンプルなども触れて楽しめるよう、併せて置かれている。
同じくNO-MAの2階には、平野智之さんの「美保さんシリーズ」を立体化した展示もある。
平野さんの作品は、きっちりとしたシンプルな線で描かれている。それは、立体に置き換えるのにちょうど良い作風であったように思える。また、「美保さんシリーズ」には元々作者が「字幕」と呼ぶストーリーが添えられている。これもまた、手で触れて観る作品の場面をイメージするのに役立ってくれるのではないだろうか。
(記者:塚本悦子)
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【展覧会】「ちかくのまち」
http://www.no-ma.jp/town_of_perception
【盲ろうの人、視覚障害の人と楽しむ “ランチと芸術鑑賞会“ 2回目】
あいにくの雨の中、10月9日に盲ろうの人、視覚障害の人と楽しむ“ランチと芸術鑑賞会“の2回目が行われました。
盲ろうの人、視覚障害の人が5人、介助者9人、関係者5人が、おでん・うどんの店「市」に集合しランチです。
今回の近江八幡芸術祭に合わせて作成された「やさしいメニュー」があり、料理の大きな写真と大きな文字の大変見易いメニュー表から、お目当ての料理を選びます。
参加者の居住地はバラバラですが、皆顔見知りの様で、久しぶりの再会に笑顔で話をしながら料理を堪能しました。
ランチのあとNO-MAに移動し、まずは自己紹介。
愛知から在来線に乗って、白杖片手にひとりで来られた女性や、「僕は雨男なので、出かける時は必ず雨が降ります」と自己紹介される男性。そこで皆の笑いを誘います。そのあとその男性の介助者が「私は晴れ女なので、晴れると思っていたのに、○○さんのパワーに負けました」と自己紹介し、また笑い。
盲ろうの人と介助者は何度もペアを組んでいる様で、お互い気心が知れた同士で、こちらも和みます。
会場での説明は、介助者が手話で通訳したり、耳元でゆっくりささやいたり、手のひらに指で文字を書いたりとそれぞれの人に合った方法で伝えていました。
作品の観賞の際も額に触れて大きさを想像し、介助者のきめ細かな説明に耳を傾け全身で感じようとする姿に心うたれました。
会の最後は、第1回と同じくインスタントカメラで撮った写真のお披露目です。
写真も、タイトルもユニークなものが多く、参加者の感性の良さを感じました。
心に残る一日となりました。
(記者:林 初美)
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【展覧会】「ちかくのまち」
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