鍼灸医学の門(鍼聖岐伯)

鍼灸医学の門(鍼聖岐伯)

Facebookページ「鍼灸医学の門」は、私の鍼灸治療について具体的に説明するもので、鍼灸医学知識を持った専門家を対象に書かれています。    

13/08/2022

#複視 他 #多愁訴 の患者の鍼治療

【 症 状 】
患者は転落事故で #頭部外傷 を負い #頭蓋骨骨折 #硬膜外血腫 となり緊急手術を受けました。
転落時の怪我は頭部の他、第3頚椎骨折、第4胸椎椎体破裂骨折、肋骨骨折等多数であったと言います。頚椎も胸椎も脊髄損傷に至らずに済んだことは幸いでした。
受傷から5ヶ月目になり、当院へは #滑車神経麻痺 による #複視 の治療に来院されました。
複視は、医師には「右眼の動きが悪く、右滑車神経麻痺(右上斜筋麻痺)」と言われたと言いますが、水平位から下を視ると下へ視線を移せば移すほど上下のズレ幅が広がり傾いて視えます。右眼球を下へ向ける #下直筋麻痺 が問題のようてす。上直筋優位のため垂直線が左へ時計で50分〜55分の角度で傾くのです。上斜筋の麻痺だけではほぼ重なった高さで傾くズレが生ずると思われます。何故なら上斜筋は下直筋で眼球が下へ向いたときに生ずる傾きを修正する筋だからです。

ただ、複視の他にも書ききれないほど愁訴の多いい患者さんです。

その他の【 愁 訴 】

1)頚部筋拘縮
手術から2ヶ月に及ぶ間、頭頚部を固定していたため、斜角筋など頚部の筋は拘縮状態で痛いを通り越して感覚が鈍いと言います。

2)背部痛
背部痛は、椎体破裂骨折をした第4胸椎の左側付近に強い痛みがあり、前傾姿勢や寝返りで痛みが増す。

3)頭部 #術野違和感 の違和感しびれ感
頭蓋骨の骨折箇所は手術で #チタンプレート がはめ込まれたが、 縫合の瘢痕からチタンプレートが入った辺りがモヤモヤとしびれるような違和感がある。

4)左手第1指CM関節炎
退院近くなったころから左親指の付け根に激痛が起こり、現在も続いている。X-Pに異常はない。左第1中手手根関節付近は右に比べ少し腫れていて、強い圧痛(触れるだけで痛い程)がある。

5)足底筋膜炎
カカトから足底全体が痛い。これは怪我する前からの症状で、歩かなかった入院中は消えていたそうですが、退院後再び激しくなったと言います。とくに、第1趾に痛くなると言います。

6)不眠症
10数年前から不眠症で、眠剤を服用しているが、服用しても眠れているのか分からないと言う。

7)左に耳鳴と難聴
20数年前、流行性耳下腺炎に罹患し、それ以来、左耳は激しい耳鳴が絶えず鳴っていて、聴力はほとんどない…と言う。耳鼻科診断では「内リンパ水腫性難聴」と言われたと言うが?、流行性耳下腺炎が原因であれば診断名は「ムンプス難聴」となるはずで、これはウイルスや細菌の感染により内耳の有毛細胞が障害を受けるためどのような治療によっても改善は見込めない。

8)便秘症と残便感
この便秘と残便感も10数年来続いていると言います。

9)過食
いくら食べても満腹感が得られない。
これは、便秘と関連して胃大腸の陽明経の熱のせいですが…次の10)の症状も関係します。

10)顔赤く熱くなる
とくに、鼻と口の周りが赤く、絶えず吹き出物が出来ると言います。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

【鍼治療】
転落事故で #複視 になった患者さん(多愁訴)の鍼治療です…《症状については…下のシェアしたセイ鍼灸院投稿をご参照ください》

脈は緩軟、弛緩した弱く柔らかい脈です。患者さん本人は『健康診断で「徐脈」を指摘された』と言いますが、弱く柔らかくて脈拍数が数えにくい感じ。(鍼治療後、脈が触れやすくなって数えると「63/分」でしたが…)ここで重要なことは、「柔らかい弱い」=「虚」と考えないことです。
かならず、舌診をします。
舌診では、舌質大きく暗赤色、柔らかくボテっとしているが歯痕は無い。苔薄く目立たないが湿っている。
このような場合、湿邪の存在を考えます。
愁訴の「 8)便秘症と #残便感」の残便感は湿邪による場合が多いいと思おます。
愁訴「 10)顔赤く熱くなる」は陽明の熱です。湿邪の熱が絡んでいる、長期に渡り湿邪があり「化熱」している…と考えます。
したがって、手足陽明経、曲池・足三里・内庭に瀉法加透天涼(熱を取り除く手技)とし湿熱を除きます。
陰陵泉に平瀉平補としますが、瀉法が必要な場合は瀉法を優先します。また、瀉法と補法の割合は、舌診と脈診の状態に合わせ加減します。
効果として…
愁訴 8) の便秘とともに訴えていた「残便感」は、当院の鍼治療を受けてからは全く気にならなくなったと言います。

#口の周りの吹き出物が出来なくなった
状態 10) の顔赤く熱くなるは、顔の赤さについては若干の軽減感がある程度てすが、熱くほてることは無くなり、口と鼻の周りに出来ていた吹き出物は鍼治療を受け始めてからは新しいものは出来て来なくなり、すべすべして肌の状態が良くなったと言います。

愁訴 3) の #チタンプレートがはめ込まれた「頭部 #術野の違和感しびれ感」に対しては、術野は左側頭部ですから左少陽経の手と足のツボに刺鍼し双手瀉法を加えます。もちろん、虚実特に邪気の実に適切に対処してからです。《霊枢経脈篇には「まず虚実を整え、虚実が無ければ(または、虚実がなくなったら、なくなってから…)その経を取る」と書かれています。》
左足少陽胆経のツボ足の臨泣と手少陽三焦経のツボ外関に刺鍼し、それぞれの鍼を左右の手指で摘み同時に瀉法します。手足の少陽経の気の流れが活発になり、数十秒から1~2分の内に側頭部の違和感は軽減〜消失します。
この患者さん東北地方の遠方の方で、神奈川県大和市の当院受診前に都心の有名(?)鍼灸院で1週間ほど鍼治療を受けていたようで、そこで効果を実感出来ず当院を受診してきたのですが…、先の鍼灸院では「開頭手術の縫合痕に刺鍼するので、毎回、治療の後、縫合痕からの出血が止まらなくて困った…」と言います。それで効果があるならまだしも「何も良くならなかった」と言いますから、この鍼灸師さん…何を考えていらっしゃるのか?…です。
左少陽経手足(上下)を双手瀉法するのに合わせて、愁訴 7) の「左に #耳鳴 と #難聴」が20数年前かあるについて…手少陽三焦経の経脈は、太古においては「耳脈」と呼ばれていたもので、耳症状に治療効果が期待できます。患側左の耳の下の乳様突起下のツボ完骨へ刺鍼し、先の手少陽の外関の刺鍼とを双手瀉法します。
これも、また、経脈篇の治療原則通り、虚実へ対処した後に行うことで効果がはっきりします。内耳のリンパ浮腫などでは、足三里瀉陰陵泉瀉もしくは平瀉平補が重要な処方になります。
20数年前からだと言う耳鳴りが消えました。
本人は「左は聴力がほとんど無い」と言っていましたが、耳元で爪をはじくと「少し離れたところに聴こえる…」と言います。

愁訴 4) の「左手第1指CM関節炎」は、入院中に退院が近くなったころから痛み出したそうで、原因に思い当たることはなく、X-Pで関節面の骨も問題は無かったと言います。
#関節炎 #関節痛 の治療ではその関節を動かす屈筋と伸筋の状態を触診し筋の張り、硬結圧痛を除くことが重要です。経脈的に関連する一連の流れを診る必要もあります。第1中手手根関節の屈筋と伸筋は、手太陰肺経と手陽明大腸経の流注範囲にあります。
短母指伸筋と長母指伸筋は手陽明、母指球筋の短母指外転筋と短母指屈筋は魚際穴のあるところですから手太陰、長母指屈筋も同じく手太陰です。この患者さんは、咳や喉の症状はが全く無いにもかかわらず、この関節痛がある左手太陰の募穴中府に極めて強い圧痛がありました。左の尺沢から孔  最にかけても硬結・圧痛が顕著でした。
手太陰は手陽明と表裏関係で、鼻は呼吸器の一部ですから手太陰肺経の司るところです。また、吹き出物も皮膚、体表は肺の司るところです。
虚実への対応処置を行った後、左孔最穴瀉法にて左中府の圧痛は消失し、左手第1指末節の爪甲の際、手太陰の井穴少商穴に刺鍼し、先の孔最穴と双手瀉法します。すると、第1中手手根関節の圧痛は軽減〜消失します。ただ、この患者さんの場合、痛みの消失は一時的で、直ぐに再燃してしまいました。
また、屈伸運動で痛みがあるものは、運動刺法が有効です。手第1指を背屈(伸展)する力を入れさせたり緩めさせたりしながら、短母指伸筋や長母指伸筋の辺りを四指腹で押さえ筋の動きを触知して、その場を触診して硬結・圧痛のある筋を確定します。そこへ刺鍼し2分の1回転ほどの軽い回旋手技にて瀉法を加えながら屈伸運動をさせます。すると、屈伸運動で誘発されていた痛み(運動痛・動作時痛)が軽減〜消失します。そのまま治って行くケースもありますが、この患者さん場合は再燃しています。
ただ、この患者さん体表が極めて過敏で、今までに経験したことのないほどの痛がりで刺鍼が困難と初診時思われたのですが、第2診目以降は肺募穴中府の圧痛消失とともに体表の過敏、痛がりは無くなったことは、「肺は体表をつかどる」の観点から興味深いことです。

愁訴 2) の「背部痛」については、痛む場所、範囲を診ます。
第3胸椎棘突起の左側付近に限局した痛みがあり、側胸点(胸郭外側面の肋間神経の圧痛点)を第12肋間から数えて行きます。脇の下に近い第4肋間に強い圧痛があります。第7肋間辺りから肩甲骨を避け内側に最長筋の外側に沿って肋骨(肋骨肋間)を数え上げて行き、第4肋骨の高さがほぼ背部痛の場所と一致するようです。
刺鍼は、肋間神経痛の刺鍼方法と同じです。数え上げてきた第4肋骨の内側が最長筋に隠れて骨が触れ難くなるところに、第4肋骨と関節になっている第4胸椎横突起が位置します。最長筋はこの横突起に付着しています。この直下に最も強く圧痛があります。これは、胸神経前枝、すなわち肋間神経がこの奥から肋骨の下面へ進んで行くところに位置するからです。この第4肋骨が触れなくなる最長の圧痛点(肋骨の下縁の高さ)から内方へ約60度方向けて刺鍼します。60度は、第1胸椎横突起の最大傾斜角度です。胸椎横突起の傾きは、第1胸椎が最大で、下位へ行くに従い角度は垂直に近くなります。したがって、上位胸椎横突起にあっても60度内方へ傾けて刺入すれば、鍼先は椎骨へ向かい、気胸の危険性を無く安全な刺鍼が行なえます。安全確認のため、10mm程度刺入したところで鍼から押し手を離してみて、鍼の角度が斜め打ちがわへ60度傾いているかを見ます。刺鍼の深さは20~30mm前後、鍼感を得たら側胸点の圧痛が軽減〜消失したかを確かめます。消失していれば、鍼を抜きこの部の圧痛の軽減〜消失を確認します。
側胸点の圧痛が無い場合は、同側の内関(手厥陰曲沢前に硬結圧痛がある)、または、神門(手少陰少海前の硬結圧痛が強ければ)に刺鍼し背部の圧痛の軽減〜消失を確認します。項部に硬結があれば、手足太陽を双手瀉法します。
動作痛、前後屈伸の運動痛には足太陽経脈を用い運動刺法を行い、回旋、振り返る動作で痛むものには、手太陽経脈を用いて運動刺法を行います。これは、足太陽は「仰伏できない」つかさどり、手太陽は振り「返り見られない」をつかさどると《霊枢経脈篇》に言う通り効果があります。背部の痛む点へ1~2ミリ刺入して運動刺法を行っても可です。
治療効果は、それまで背部痛のため「うつ伏せでスマを見ることができなかったのが痛くなく出来るようになった」と言います。
また、頚部の治療効果もあいまって「うつ伏せになると、眉間から鼻の奥が重苦しく圧迫される感じになっていたものが、起こらなくなった」と言います。

⇒つづき[編集中]

08/08/2022

転落事故で #複視 になった患者さん(多愁訴)の鍼治療です…《症状については…下のシェアしたセイ鍼灸院投稿をご参照ください》

脈は緩軟、弛緩した弱く柔らかい脈です。患者さん本人は『健康診断で「徐脈」を指摘された』と言いますが、弱く柔らかくて脈拍数が数えにくい感じ。(鍼治療後、脈が触れやすくなって数えると「63/分」でしたが…)ここで重要なことは、「柔らかい弱い」=「虚」と考えないことです。
かならず、舌診をします。
舌診では、舌質大きく暗赤色、柔らかくボテっとしているが歯痕は無い。苔薄く目立たないが湿っている。
このような場合、湿邪の存在を考えます。
愁訴の「 8)便秘症と #残便感」の残便感は湿邪による場合が多いいと思おます。
愁訴「 10)顔赤く熱くなる」は陽明の熱です。湿邪の熱が絡んでいる、長期に渡り湿邪があり「化熱」している…と考えます。
したがって、手足陽明経、曲池・足三里・内庭に瀉法加透天涼(熱を取り除く手技)とし湿熱を除きます。
陰陵泉に平瀉平補としますが、瀉法が必要な場合は瀉法を優先します。また、瀉法と補法の割合は、舌診と脈診の状態に合わせ加減します。
効果として…
愁訴 8) の便秘とともに訴えていた「残便感」は、当院の鍼治療を受けてからは全く気にならなくなったと言います。

#口の周りの吹き出物が出来なくなった
状態 10) の顔赤く熱くなるは、顔の赤さについては若干の軽減感がある程度てすが、熱くほてることは無くなり、口と鼻の周りに出来ていた吹き出物は鍼治療を受け始めてからは新しいものは出来て来なくなり、すべすべして肌の状態が良くなったと言います。

愁訴 3) の #チタンプレートがはめ込まれた「頭部 #術野の違和感しびれ感」に対しては、術野は左側頭部ですから左少陽経の手と足のツボに刺鍼し双手瀉法を加えます。もちろん、虚実特に邪気の実に適切に対処してからです。《霊枢経脈篇には「まず虚実を整え、虚実が無ければ(または、虚実がなくなったら、なくなってから…)その経を取る」と書かれています。》
左足少陽胆経のツボ足の臨泣と手少陽三焦経のツボ外関に刺鍼し、それぞれの鍼を左右の手指で摘み同時に瀉法します。手足の少陽経の気の流れが活発になり、数十秒から1~2分の内に側頭部の違和感は軽減〜消失します。
この患者さん東北地方の遠方の方で、神奈川県大和市の当院受診前に都心の有名(?)鍼灸院で1週間ほど鍼治療を受けていたようで、そこで効果を実感出来ず当院を受診してきたのですが…、先の鍼灸院では「開頭手術の縫合痕に刺鍼するので、毎回、治療の後、縫合痕からの出血が止まらなくて困った…」と言います。それで効果があるならまだしも「何も良くならなかった」と言いますから、この鍼灸師さん…何を考えていらっしゃるのか?…です。
左少陽経手足(上下)を双手瀉法するのに合わせて、愁訴 7) の「左に #耳鳴 と #難聴」が20数年前かあるについて…手少陽三焦経の経脈は、太古においては「耳脈」と呼ばれていたもので、耳症状に治療効果が期待できます。患側左の耳の下の乳様突起下のツボ完骨へ刺鍼し、先の手少陽の外関の刺鍼とを双手瀉法します。
これも、また、経脈篇の治療原則通り、虚実へ対処した後に行うことで効果がはっきりします。内耳のリンパ浮腫などでは、足三里瀉陰陵泉瀉もしくは平瀉平補が重要な処方になります。
20数年前からだと言う耳鳴りが消えました。
本人は「左は聴力がほとんど無い」と言っていましたが、耳元で爪をはじくと「少し離れたところに聴こえる…」と言います。

愁訴 4) の「左手第1指CM関節炎」は、入院中に退院が近くなったころから痛み出したそうで、原因に思い当たることはなく、X-Pで関節面の骨も問題は無かったと言います。
#関節炎 #関節痛 の治療ではその関節を動かす屈筋と伸筋の状態を触診し筋の張り、硬結圧痛を除くことが重要です。経脈的に関連する一連の流れを診る必要もあります。第1中手手根関節の屈筋と伸筋は、手太陰肺経と手陽明大腸経の流注範囲にあります。
短母指伸筋と長母指伸筋は手陽明、母指球筋の短母指外転筋と短母指屈筋は魚際穴のあるところですから手太陰、長母指屈筋も同じく手太陰です。この患者さんは、咳や喉の症状はが全く無いにもかかわらず、この関節痛がある左手太陰の募穴中府に極めて強い圧痛がありました。左の尺沢から孔  最にかけても硬結・圧痛が顕著でした。
手太陰は手陽明と表裏関係で、鼻は呼吸器の一部ですから手太陰肺経の司るところです。また、吹き出物も皮膚、体表は肺の司るところです。
虚実への対応処置を行った後、左孔最穴瀉法にて左中府の圧痛は消失し、左手第1指末節の爪甲の際、手太陰の井穴少商穴に刺鍼し、先の孔最穴と双手瀉法します。すると、第1中手手根関節の圧痛は軽減〜消失します。ただ、この患者さんの場合、痛みの消失は一時的で、直ぐに再燃してしまいました。
また、屈伸運動で痛みがあるものは、運動刺法が有効です。手第1指を背屈(伸展)する力を入れさせたり緩めさせたりしながら、短母指伸筋や長母指伸筋の辺りを四指腹で押さえ筋の動きを触知して、その場を触診して硬結・圧痛のある筋を確定します。そこへ刺鍼し2分の1回転ほどの軽い回旋手技にて瀉法を加えながら屈伸運動をさせます。すると、屈伸運動で誘発されていた痛み(運動痛・動作時痛)が軽減〜消失します。そのまま治って行くケースもありますが、この患者さん場合は再燃しています。
ただ、この患者さん体表が極めて過敏で、今までに経験したことのないほどの痛がりで刺鍼が困難と初診時思われたのですが、第2診目以降は肺募穴中府の圧痛消失とともに体表の過敏、痛がりは無くなったことは興味深いことです。

⇒つづき[編集中]

29/06/2022

#慢性気管支炎 #咳 #痰 #身体がだるい #背部痛 #息苦しい
患者(30代 女性)2年前(2020年)の11月、急性気管支炎を発症し、一時回復するものの咳と痰の症状を繰り返すようになり、昨年末(2021年12月)には肺炎となり入院加療となりました。
今年(2022年)になっても咳と痰の症状はつづき、ときに息苦しさが出るようになったそうです。主治医から慢性気管支炎との診断を受け、『息苦しさはあっても喘息と言えるほどではない』と言われたそうです。これらの呼吸器系症状に加えて、身体のだるさ、背中全体の痛み、食欲不振などが重なり仕事へ行けなくなり休職(2022年3月)することになってしまったと言います。
休職して治療に専念しても、病院からの薬や漢方服用では一向に症状が改善しなかったため、咳と痰の治療に近くの鍼灸院へ通い、背部痛の治療になるだろうと整体院へも通ったそうです。しかし、咳と痰の改善は全くなく、背部痛も痛みが少しまぎれる程度で重だるさがなくなりませんでした。
今年(2022年)5月、インターネット検索で当院を知り来院(初診受付2022/05/09)です。
痰の症状は、慢性気管支炎特有の朝に多く出るものでしたが、初診時の治療1回で、翌日の朝は痰が全く無かったと言います。
患者は『うれしいよりも、ビックリした!』そうです。
正しく鍼治療を行えば当然の帰結です。鍼治療には即効性があります。たぶん、患者は『4月まで通いつづけた針治療はなんだったのか?』と思ったことでしょう。
背部痛(背部の重だるい痛み)については、初診時『整体に通っているから・・・』当院ででは治療しなくてよいとの患者申し出によりあえて直接背部への施術はしませんでしたが、手足の要穴の運用で体全体を治すのが本来の鍼治療ですから治って行きます。
この「重だるい」と言う症状は「湿邪」「内湿」「湿濁」による中焦「脾気虚」による症状ですから、前側の中焦「脾」が調えば後側背部の症状も消えてなくなるのは当然です。

■ 慢性気管支炎の基本的な鍼治療法について説明しましょう。
① 痰についてだが、急性気管支炎であっても慢性気管支炎であっても基本的考え方(治療原則)は同じである。
まずは、二つの病理原則を覚えて置こう。
「脾は生痰の源、肺は貯痰の器」と「湿濁困脾」の二つだ。
鍼灸の内経医学では気管支から痰は生じない・・・
水湿の運化をつかさどる脾の不調によって滞った水分が痰となり、肺という器に溜まると考えます。原因は脾にあります。
脾の運化機能の低下は脾虚(脾気虚)と言うが脾気が虚する原因を内経では「飲食労倦(勞傷)」とする。飲食の不摂生と過労、この他に七情の思(思い悩む)、外邪としての湿などであろう。
この「湿」という邪気(内湿も含めて)五行分類では「土」に属するため「脾」に影響し「湿濁困脾」の原則どおり脾気虚の症状を招く。脈は緩虚など柔らかく浮いて触れる(濁飲(水)などの停滞が多いときにはこの限りでなく、滑脈など沈位に有力となるが)。脾虚として、太白(足太陰脾経の土原穴)に補法をしたくなるかもしれないが、先ずは、「湿」の邪気を取り除く瀉法加えることが正しい治療となります。脈だけでなく舌、舌苔を診るべきはここにある。舌苔は「サラッとした潤いで薄っすらと白い」のが正常です。ベタツイて湿った感じや糸状乳頭が長い(厚い)、ぬるっとしているなどは病的状態です。

【 治療法 】
手足の陽明経とともに足太陰脾経のツボ陰陵泉穴を瀉法し、湿邪湿濁を取り除くとともに…、痰を除く「去痰」のツボ豊隆穴を瀉法します。この豊隆穴も足陽明胃経のツボです。
脈診で「数」の傾向(促脈)や舌診で舌質が真紅や苔が黄色い、痰の色が黄色い、痰の粘性が強い…など熱の存在があれば、内庭穴瀉や各瀉法穴に透天涼の手技を加えます。
咳があれば、肺募穴の中府の圧痛を診、尺沢から孔最の圧痛硬結を調べ圧痛硬結が強いところでツボを取り瀉法します。
喉の痛み違和感には、足少陰の照海穴と手太陰の列欠穴を双手瀉法します。
背部の張りや、項の凝りがあれば、同側の足太陽申脈の瀉法、効果が弱ければ手太陽と双手瀉法します。
この患者さんの場合、ずっと整体に通い背部の重いだるさが治らなかったものが、湿濁の除去の虚実の調整と経脈の経気の流れを良くすることで、背中が「気にならなく」なりました。背部には、刺鍼ほおろか、指一本触れずにです。
もちろん、痰も激減です。
初診時治療の翌朝は、「いつも朝に痰がたくさん出ていたのが、全く出なかった」と…言った具合に効果が出ます。
鍼治療は、即効的に効果がはっきり現れます。

余談ですが…
この患者さんとは別の患者さんで『他の鍼治療院に1年通って効果がなかったので…当院へ来た』と言う患者さんがきましたが、この方の主訴は「めまい」でしたが…やはり、1回目の治療直後からめまいの起こる頻度が激減しています。

05/05/2022

#両眼複視 #上直筋麻痺 #眼瞼下垂 #項部が凝る #中国鍼治療

患者(50才代男性)は5~6年前から両眼複視(両眼で視ると物が二重に視える)になり、最近その症状が進むとともに、瞼マブタに重い感覚が絶えずあり、ときに眼瞼下垂が起こるようになったと言います。
K大学病院神経眼科の検査を受けましたが、血液検察も画像診断も特に異常はなく原因は分からず『歳のせい…』だと謂われたと言います。

患者は、昨年まで仕事で中国に居たため、現地で本場「中医学の鍼治療」を受けたと言いますが、全く効果がな無かったとそうです。
また、帰国後、日本の鍼灸治療も受けたそうですが、やはり全く効果が無かったと…。

【 当院での治療効果…
当院での初診時、第1回目の治療前と治療直後の複視の見え方の変化は、図(写真)の通りでした。
◇治療前…正面の130cmの高さから下はズレることなく一致して見えるますが、140cmのところで重なってズレて見えると言います。ここから上方は、視線を上へ向ければ向けるほど上下へズレ幅が大きくなって行きます。
◇治療後…150cmまでズレることなく一致して見えると言います。160cmのところで、重なってズレ始め…視線を上へ移動するとズレ幅は拡がります。

【 複視の状態は…
 この患者の複視は、上下方向にズレで、上の像が左肩上がりに傾いて視える…左眼の上直筋麻痺て、両眼の動きを観察しても左眼の上方向への動きが劣っているのが分かります。

【 その他の愁訴、及び…内経医学的診察治療…について
 患者は…首肩の凝りが強く、2週に一度はマッサージに掛からないといられないと言います。
特に、後頚部「項部」の硬結が強いのですが、押しても痛みはないようです。項部(後頚部)頭半棘筋のあたりの凝りは、眼の内側晴明穴から始まり頭頂部を通り後頚部から背部、脚後側へ下って行く足太陽膀胱経の通り道です。
内経医学ては、経脈の気の循環(流れ)が滞ると病が生じる…ことになっています。筋肉の硬結、凝り、張り…は、その部の経脈の気の流れが滞っている(気滞)ことを意味しています。項部の足太陽の気のうっ滞はその流注の前後へ影響し、また、表裏関係の経脈・臓腑へも影響します。
眼は全ての陽経脈が集まりますが、眼球を上へ向ける上直筋の動きは、足太陽膀胱経脈の気の流れる方向と一致していますから、関連性は大きいものと考えられます。この項部の気のうっ滞(凝り)を解消することは治療効果を大きく左右します。

 脈診…は「虛」特に「右関上」が触れない程…。右関上は脾胃の脈で、脾気は「昇気」をつかさどり、眼を上へ向ける、瞼を上げる…などの作用は「脾気」「昇気」と関係します。
しかし、食欲はあり過ぎぐらいで最近肥ってしまっていると言います。
 また、複視「五臓六腑の精」が不足すると「目系の精が虛し、枝を見る(一本の物が枝分かれして見える…複視を意味する)」の「精」の素である「腎」の脈「左尺中」も虛しています。
 舌診…では、やや赤く、潤っているが苔タイ少なく小裂紋ある(陰分が傷ついている)。

【 治療は…ます、原因の現れとして…脈状を整える…
❶ 足三里へ刺鍼し平瀉平補(胃の気がない脈のため脾胃の気を補う)に、内庭に刺鍼し瀉法に加透天涼(胃熱・陽明経の熱を取り除く)としました。
脈の変化を診…左寸・関
(心・肝)の脈は良となり、左尺中浮いて触れるとなったため、足太陽膀胱経、申脈穴瀉法とし…項部(後頚部)の凝りを緩める。すると、当初…膝の裏にベッドとの間隔が一拳分隙間があり膝関節が屈曲していたものが、隙間が無くなる。
脈を診て…左尺中の浮いた脈が消え沈位に細い脈が触れるに変化…を確認して、足少陰腎経脈の太谿穴に刺鍼し補の手技を加える。

【 経気の流れる妨げる
筋硬結を完全除去…
❷ 項部(後頚部)の凝りはほとんど無くなっているが…、ゴリゴリと触診し患者自身が筋張っていると感じたため、頚椎側刺鍼法、第2.第3左右、第4右側のみを、関節突起側から横突起後結節へ向けて刺入。項部頭半棘筋の圧診による患者の筋張り感が消えたことを確認。
【 関連経脈の循環を最大にする…
❸ 風池穴からイオンパンピング・コードにて交差させ逆側の申脈穴へ繋ぎ、…眉頭のツボ攅竹穴から晴明穴へ向けて0番1寸鍼を抜けないように3mmほど平刺しイオンパンピング・コードを同側申脈穴へ繋げる。
脈状は絶えず確認し、左尺中(先天の精)と右関上(後天、五臓六腑の精、及び昇気をつかさどる脾気)の補益を図る。

01/02/2022

患者(52才女性)は、頚肩部が張って頭痛がすると言います。

項部頭半棘筋(左右とも)硬結・圧痛があり、肩上部僧帽筋に張りがあり、特に右側強い張り。

両側三角筋を把握すると右側に硬結が強く左に比べわずかに筋肉の膨らみが劣る。上腕二頭筋も右側に張りが強く筋スジ張バった感触があり圧痛あり。

脈診(脈状)…浮緊やや有力
舌診…舌質淡紅色
   舌苔薄白中央やや厚い

脈状と舌苔からは、表に風寒の邪気を受けたための頚肩部の張り…として…

曲池(瀉)後谿(瀉)を主とし、手陽明曲池に足陽明の足三里(瀉)を配す。これは、舌苔中央やや厚いの中焦の水湿停滞の除去にも共通し、頭痛のあるコメカミ付近は足陽明の経路にあたります。
手太陽の後谿(瀉)は開表し、表に着いた邪気を払う。これに足太陽の申脈を配すと項部の張りは即効的に緩解します。

頚肩部の硬結・圧痛が充分に消えない場合、頚椎側刺鍼法で対処します。
頚肩部の触診の段階で、頚椎を触診して置きましたが、この患者では椎間関節付近の硬結が強く、ゴツゴツとした感触と強い圧痛がありました。
右側三角筋と上腕二頭筋の硬結が強いため、「右腕が上げ難くないですか?」と訊くと『上げ難くかった』と応えます。右側は肩凝りと言うより、五十肩の初期段階です。

頚椎側刺鍼法は、硬結・圧痛を確認しながら先ず、椎間関節側の後方から上下の関節突起の境目に沿って前へ横突起後結節に向けるような角度(ほぼ矢状方向)で刺入し、ズンとした鍼感を得るようにします。これは、主に頚神経後枝を刺激すると思われますが、関節突起に着く自所的筋群の緊張硬結を解くとともに、脊髄内から中枢の反応によりその高さから出る前肢の運動神経支配の筋緊張をも緩めます。
頚椎側刺鍼法の第2法として、頚椎横突起後結節に圧痛が残る場合、この後結節から直刺しズンとした鍼感を得ます。特に肩関節の運動に関わる筋群へ運動神経を出す第4、第5、第6頚椎では頚椎側刺鍼とその高さから運動神経を受ける筋の硬結・圧痛点への刺鍼とを双手瀉法します。特に、外転挙上し難いものには三角筋の硬結・圧痛と大結節付近の圧痛、ならびに棘上筋に刺鍼し頚椎側刺鍼と双手瀉法します。

23/12/2021

霊枢「経脈篇」で繰り返して書かれ、強調されていることがこの「治療原則」です。
『盛則寫之虚則補之熱則疾之寒則留之陷下則灸之不盛不虚以經取之』
この治療原則では、
先ず、虚実補瀉(寫)を行う「盛則寫之虚則補之」。盛(実)なれば之を寫し…と、実を瀉すことを先に記述しています。
つづけて、虚なれば之を補うとなっています。
「盛(実)」を取り除く瀉の方法を、病状を寒熱に分け、熱であれば之を疾く(すばやく速刺速抜)し、寒であれば之を留め(置鍼)るとしています。
実際には、更に表裏や風寒暑(熱)湿によって用いる経脈経穴が決められます。虚実夾雑のことも多くあります。
虚の場合、陷下(陥凹)していれば之に灸す。
以上のように、虚実寒熱への対処を優先し…
次に、「不盛不虚以經取之」虚せず実(盛)せずであれば(虚実が無ければ)、経(経脈、病変・変動のある経脈)に之を取る…と言っています。

探していた《黄帝内経「霊枢」》を積み重なった書類の下から掘り出した・・・のだが、
『・・・爲此諸病。盛則寫之虚則補之熱則疾之寒則留之陷下則灸之不盛不虚以經取之。』
『・・・爲此諸病(これら諸病を為す)』以下の、正確な記述を確かめたかったからだ。
これは、言わずもがな《霊枢・経脈篇第十》の各経脈の流注・是動病・所生病の説明の文末に判で押したように記される治療原則です。

21/12/2021

探していた《黄帝内経「霊枢」》を積み重なった書類の下から掘り出した・・・のだが、
『・・・爲此諸病。盛則寫之虚則補之熱則疾之寒則留之陷下則灸之不盛不虚以經取之。』
『・・・爲此諸病(これら諸病を為す)』以下の、正確な記述を確かめたかったからだ。
これは、言わずもがな《霊枢・経脈篇第十》の各経脈の流注・是動病・所生病の説明の文末に判で押したように記される治療原則です。

15/12/2021

#上腕骨内側上顆炎 の鍼灸治療の方法は「内経医学」的にはシェアした通りだが、この症例は内側上顆が両側とも痛い例である。
片側のみの場合は、
「 #反対側刺鍼法」を試してみると著効することが多い。
この「反対側刺鍼法」は痛みのある患側と同じ解剖学的部位を反対側の健側に取って刺鍼するものてす。左の内側上顆に痛みが在る場合は、健側の右の内側上顆に刺鍼することになります。
圧痛のある「点」を正確に反対側へ置き換えて刺鍼することがポイントとなります。
この方法は、内側上顆炎のみならず外側上顆炎や膝関節炎、足関節捻挫などの圧痛点にも応用できます。
内経医学的に言えば「病陽にあれば、これを陰に取り、病陰にあれば、これを陽に取る」左が陽であれば右は陰と言うことです。
軽減したが、なお、少し圧痛がのこるようであれば、その患側の圧痛点へ「知熱灸」を1~2壮すえると圧痛はさらに軽減、ないし消失します。母指頭大に固めた温灸用モグサを圧痛点に置き着火し、半分から3分の2ほど燃えるまで風を送ります。患者さんに灸の温かさを感ずるか訪ね…「熱くなったら知らせて下さい。熱さを感じたら取り除きますから…」と伝え、そのようにします。1壮終えて圧痛を確かめはっきり軽減していればそこまで、軽減感が弱ければ2壮目を追加します。
内経医学的処置をシェアした症例のように行って、なお、筋硬結圧痛が顕著であれば、これを「頚椎側刺鍼法」にてのぞきます。

20/11/2021

・・・・編集中・・・・
鍼治療の方法論として、神経解剖学的考え方からのアプローチと純粋に東洋医学的考え方からのアプローチとがある。東洋医学と言うことばは、意味が広く黄帝内経的生理病理感を超えて現代医学的内容が含まれるため、ここ(鍼灸医学の門)では「内経ダイケイ医学」と呼ぶことにしています。
シェアした腰下肢痛の症例では、神経解剖学的考え方によるアプローチの部分のみを述べたものです。
ここでは、私が実際の治療で神経解剖学的考え方による治療法の前に行っている「内経医学的考え方による治療法」について説明します。

鍼灸の治療効果は、現代医学的には抹消血流改善による効果で、これを内経医学的言うと、臓腑経脈の気血の流れを改善することによるものとなります。
経脈の気の流れが滞る(気のうっ滞)と、そこに筋の張りが起こり、長く続くと硬結・圧痛となります。
筋の張りや硬結・圧痛の除く方法に「神経解剖学的」アプローチと「内経医学的」経脈的アプローチがあることになります。
たとえば、坐骨神経領域の腰下肢痛では、神経解剖学的に第5腰椎側に刺鍼する方法の他に、下肢後側であれば足太陽経脈(膀胱経)、前脛骨筋の硬結・圧痛であれば足陽明経脈(胃経)、下腿外側腓骨筋部であれば足少陽経脈(胆経)の経気の流れをうっ滞させている原因を除き、流れを活発にしすれば症状は改善することになる。
経気の流れをうっ滞させている原因が何かを知るために、脈診や舌診を行う訳です。
先ずは、原因に対処します。

椎間板ヘルニア や 椎間関節捻挫 などで神経根近くに炎症がある場合、脈診では有力(実脈)舌診では舌質の色が赤紫色などとなる。三陰交穴(瀉加透天涼)、内庭穴(瀉)、曲池穴(瀉)、足三里穴(瀉)、脈に弦が観られる、または、六部定位脈診で左関上が特に有力、または、腹診で臍の左側に張りや圧痛がある場合は太衝穴(瀉)を加える。以上が原因への対処であるが、これは「急性実証」的な場合で、すべてがこれに当てはまる訳ではない。
内経医学的に原因への対処が済んだら、経脈的に対処することになる。
項部頭半棘筋を硬結・圧痛を左右比較する。たいがいは、腰下肢に痛みがある方側に硬結・圧痛が強く出ていることが多い。この場合、足太陽膀胱経(患側)の申脈穴(瀉)を施し項部頭半棘筋の硬結・圧痛が軽減ないし消失すると下肢後側から同側の腰背部の張りは軽減する。たとえば、SLR(下肢伸展テスト)で擬陽性や膝裏から大腿後側に突っ張りがある場合、刺鍼前より下肢を伸展挙上し易くなり、計測角度も大きくなる(陽性の場合でも軽減することが多い)。申脈穴のみで効果が弱ければ、手太陽経脈(小腸経)後谿穴(瀉、足太陽申脈穴と双手瀉法)を用いるとよい。これは陽経脈の場合、手足の同一名経脈は、流注上一本につながった流れとなっているためです。また、陽経脈の流れが改善・旺盛となれば、それにともない表裏関係の陰の経脈の流れも促進されることが期待できます。
下肢外側の症状には、足少陽経脈(胆経)足臨泣穴(瀉)、陽陵泉穴(瀉)、長・短腓骨筋の硬結・圧痛の軽減効果が弱ければ、手少陽経脈(三焦経)外関穴(瀉、足少陽経脈臨泣穴と双手瀉法)するとよい。
また、急性腰痛の場合にも、仰臥位で先の内経医学的原因への対処を行い、これに、足太陽経脈(膀胱経)飛陽穴(瀉)、または、承山穴(瀉)、足少陽経脈(胆経)陽陵泉(瀉)を施すと、腰痛が軽減して行き、当初、刺鍼前、『寝返りが痛い』と言っていた患者が伏臥位に変わるとき『あれ?痛くない・・・』と楽になる。

05/11/2021

#離人症 #うつ傾向 #知覚異常 #視覚異常 #聴覚異常 #右半身知覚鈍麻 #

患者(20代女性)は、高校時代大学受験を機に離人症を発症。以降、右半身の知覚(触圧覚)鈍麻と視覚、聴覚の異常(共に「ピントが合わない」と言う)が続いている。
当院受診後、月1~2回鍼治療していると症状は軽く過ごせ、ときに忘れていられると言う。
今回、1ヶ月半ほど受診できず、症状増悪となった。

脈 : 浮いて緩虚
舌 : 淡紅やや淡い歯痕なし、やや舌が小さい。
苔 : 白薄やや少津
肌の色 : 白過ぎるぐらい白く、やや湿っている。顔色 : メークしているが、額がやや赤みが強く感じる。額角から頬に吹出物(ニキビ)が赤紫色。生理遅延している。
その他、頚肩部が凝っていると言うが、右僧帽筋肩井穴付近に極軽度の筋緊張亢進がある程度。項部天柱穴付近頭半棘筋は、硬結や筋緊張を認めるほどではないが、圧痛ありと言う。頭頂部、側頭部は、張った感じを訴え、圧痛があります。
眼は、視点を注視できなくなり『視ているけどピントが合わない』と言い、今回この症状が増悪して来ると同時に『眼がパサパサして来た』と眼の乾きを訴えます。

脈が浮いてやわらかく虚していることから、気虚・陽虚です。皮膚の白色は体表を巡る陽気の不足のためで、この為、体表を引き締め固める力が低下しますから、汗が漏れ易くなり肌は湿っています。
また、浮いて中位沈位に脈が触れないことは陰分も虚しています。

眼は、明、火に属し、視覚的認知認識は心神の働きです。
また、鬱傾向や鬱病の症状「こころ楽しまず」は心気虚です。

額がやや赤いのは、虚陽上浮的熱か? このため眼の乾き(パサパサする)など…。

治療は、太谿穴補にて腎陰・腎精・腎気・元陽を補い、三陰交穴補を加え精血を補います。これに神門穴補を加え心気・心血を補うことになります。すると、白色で血色のなかった皮膚に赤味がさしてきます。
手足陽明、足三里穴・曲池穴瀉法にて額や眼、前頭部の熱を除き、顔面陽明部の経気の促通を図ります。
足太陽経申脈穴瀉法にて項部の圧痛過敏を除き、第2頚椎側刺鍼にて大後頭神経(頭頂部知覚)後耳介神経(側頭部知覚)を鎮静します。…頭頂部太陽経目窓穴・通天穴の圧痛軽減が明瞭でないため…手太陽後谿穴瀉を加え手足太陽双手瀉法とする。同圧痛消失を確認。
攅竹穴から睛明穴へ向け(1寸 − 0番針)抜けない程度に平刺しイオン-パンピング-コードで申脈穴へ繋げ太陽経脈の促通を強化し、風池穴左右交差して申脈へ繋げ、目窓穴に刺鍼を加える。

耳は手少陽三焦経(太素に言う耳脈)外関穴・完骨穴双手瀉法す。患者はこの瞬間から『耳の聴こえがよくなる』と言う。足少陽胆経足の臨泣穴と外関穴、完骨穴それぞれ双手瀉法し、外関穴ー完骨穴をイオンパンピングコードにて繋げ、耳門穴、角孫穴に刺鍼をくわえる。
また、右側の手足少陽経双手瀉法を行うと、離人症による右下肢外側知覚鈍麻に若干の変化(触れられる感覚が少し解りやすくなる)が起こるようです。

脈状を確認しながら、太谿穴・三陰交穴・神門穴補法を繰り返す。

時間とともに、眼と耳の感覚はハッキリしてきますが、右半身の知覚鈍麻は若干の変化に留まります。

30/10/2021

この「脾腎陽虚」または「脾腎両虚」…ですが、
元に「腎陽虚」があってその結果「脾陽虚」が続発する…は、正しいでしょうか?

「湿邪」「湿濁」の有無、影響を診なければいけません。

湿・湿濁は陰性の邪気ですから陽気を傷つけ易く、湿は五行では「土」に属し、「湿濁困脾」と言って同じ属性の「脾気」を特に傷つけることになります。
外邪の「湿」とともに、飲食の甘味や糖質も「湿」の邪気になります。
  「 湿 邪 ・ 湿 濁 」
   ↓(正邪)  ↓(賊邪)
 「脾胃土」「腎膀胱水」
湿・湿濁が存在する場合、虚証ではなくなります。
上腹部中央の脾胃の部を押圧すると不快な圧迫感を訴えます。本来、虚証では押圧されると「気持ち良い」感じを受けるものです。
特に湿邪での脈状は、弱く柔らかい虚脈系の脈状ですので、虚証として補う治療を選択してしまう誤治となり易いのです。
脈診の前に舌を診ましょう(舌診)。
舌診で舌苔が厚く湿っている(もしくは、厚く津液が多い)ものは、湿邪(湿濁)の邪気が存在します。この邪気を先ず瀉法にて取り除くことを優先します。
瀉法を加え、湿邪が取り除かれると、弱く柔らかかった虚脈に胃の気の脈が起きてきます。
右関上の脈だけでなく、左尺中の脈も起きてきます。湿邪湿濁の影響から陽気が減退していたものが、解き放たれたためです。
舌診で、歯痕が目立ち舌質の色が淡い、脈診で細弱虚の脈状が変わらない…等であれば、舌苔の改善変化を確認の後、これを補うことになります。

05/09/2021

#五十肩 #肩関節周囲炎
何故起こるか? 原因を加齢による変化…と言ってしまえば簡単だが…。
私が考える…発症のメカニズムは、頚椎の加齢的変化(椎間板が薄くなったり、椎体の角が肥厚=骨棘形成)により頚神経が、圧迫・牽引され易くなり興奮性が高まる(過敏になる)。神経の興奮性が高まると、運動神経支配域の筋緊張が高まる。これが続くと筋の血行不良、筋疲労、筋硬結等が起こる。
これは、椎間板の障害や変形性の障害が出やすい第5~6頚椎前後で顕著に現れやすいものと思われる。
頚椎横突起に付く斜角筋や、関節突起に付く多裂筋など頚神経後枝支配の自所的筋群の硬結状態が続くと、神経の圧迫・牽引は更に著しくなる。
肩関節の運動(上腕の運動)に関わる上肢帯の筋群を支配する運動神経は、全て第4.5.6.頚神経(前肢)であるが、五十肩や肩関節周囲炎の患者では、必ずこの第4.5.6.頚神経の出る第4.5.6.頚椎の横突起部に強い圧痛を認める。
この強く押さえて痛むところを、押さえる強さを軽減して痛くなる手前程度に圧迫すると、ここからの神経(運動・知覚ともに)の興奮が抑制される。…すると、肩関節周囲の筋の緊張も低減し五十肩・肩関節周囲炎の運動痛も軽減し、押さえていると、痛くなく上肢を動かすことができる。
神経解剖学的視点からの鍼治療では、この第4.5.6.頚神経に対し頚椎側刺鍼法を施すことになる…。
肩甲連動があり、筋萎縮が著しいものは治癒に時間を要するが、運動・動作時痛のみであれば1~2回の治療でかなり楽な状態になる。…が、緩解期が長く続くか、短期間でまた再燃するかは個体差・生活状態の差によって異なる。また、腱や筋の不全断裂などの程度によってはある範囲を超えての動作時痛が再燃し易い。無理な運動負荷を避ける必要がある。
また、神経解剖学的鍼治療前に、東洋医学的アプローチで体調を整え、経脈の気の循環を改善して置くと良いことは言うまでもない…。
《参照 : http://xn--eck2by271apj3abbd.net/details1.html》

25/08/2021

後頭部左に #頭痛 である。わたくし自身のこと…。
支配神経では、左側 #大後頭神経 と #小後頭神経 の領域に感ずる。
このような頭痛の多くは、首(頸椎)との関係で起こる。
大・小の後頭神経はともに #第2頚神経 から出るが、第2頚椎関節突起から同椎横突起後結節に向けて圧診(圧痛を診る)すると、過敏な強い痛みがある。圧診の場所は概ね風池穴の下辺りだが、正確には、後頭骨乳様突起の直下から前方へ第1頚椎横突起を触れその下の出っ張りが第2頚椎横突起だ。第1の横突起は頭部の前屈状態では乳様突起の前へ位置(解剖学では乳様突起と下顎枝の間に第1の横突起が位置しているのがニュートラルらしい?)し、頭部の後屈姿勢では乳様突起の直下に近くなる。人によっては触れ難いこともある。鍼灸院へ来る患者では後頚部が凝って筋が突っ張り短縮しているためか?乳様突起の直下を前方へ押し探ると触れるぐらいの位置にある。
この第1頚椎横突起の下やや後ろに第2頚椎横突起の後結節の出っ張りが触れる。関節突起はこの後ろとなるが、後頭骨下縁風池穴付近から下方へ圧擦して骨に当たるところが第2頚椎の椎弓から関節突起上面の傾斜面となる。横突起後結節へ向けて前方へ押すと強い痛みがある。
簡単あんちょこに治療を済ませたければ、この押した位置・方向と同様に鍼を打つ「 #頚椎側刺鍼法」を行うことで良いことになる。
また、後頭部の支配神経は、大後頭神経の他、第3頚神経からの第三後頭神経があり、第2頚椎側の刺鍼で天柱穴付近の圧痛が消えきらない場合、または、第3頚椎関節突起から横突起後結節方向へ押圧し痛みが強い場合は第3頚椎側刺鍼を行うことになる。
もっとも、これでもまだ圧痛や自覚症状が取れないことは多い。
鍼灸師成り立てのころ、簡単に早く治療を済ませることを考えていたが、天柱穴付近の頭半棘筋部の硬結(凝り)圧痛が頚椎側刺鍼の #支配神経からの鍼治療 で充分解消されなかったとき、手足の太陽経脈の刺鍼を加えたところ、たちどころに解消してしまった経験がある。
以降、 #経絡的対応 を先ず施し、残った硬結圧痛の処置に支配神経からの刺鍼を付け足すかたちとなった。
#脈診 では、浮いて柔らかいがやや有力。
頭痛など上部の症状には「 #風邪」が関わることがほとんど…で、頭自体「 #頭木」で木風に分類されている。
脈の浮いている「浮は風なり」、柔らかい感触は「 #湿邪」…風が吹いているが、かなり蒸し暑い気候であるためか…、 #前頭部から眼にかけて重い 感じの痛みというほどでもない違和感がある。やや有力は体力抵抗力が充分あるということ…で。
#実証 であり、風湿の邪気を除くことになる。
曲池瀉にて風邪を除くと頭痛の感じは、軽減感あり(去風去湿両作用あり)。
足三里瀉にて湿邪を除くと、足三里の足陽明は眼から下るため前頭部や眼の重い感じが軽減する。
以上の #虚実調整 に更に #三陰三陽経脈の促通法 として、足太陽(膀胱経)申脈穴瀉を加えると、頭痛は半減する。
脈を確認し、浮いて柔らかくやや有力が「平脈」に変わっていれば、このあとに、先に述べた支配神経からの「頚椎側刺鍼法」を施す。この順の方が刺鍼の鍼感(ひびき)の痛さもやわらかくなる。

鍼聖跂伯 on Twitter 30/07/2021

鍼聖跂伯 on Twitter

鍼聖跂伯 on Twitter “患者は「 #糖尿病 があるけど、 #血糖値 や なんかはいいのよねぇ。でも、 #慢性腎不全 で『 #人工透析 の一歩手前だ』って言われてるの」と言い、 #狭心症 もある。糖尿病は末梢血流が悪くなる病気で、そ.....

30/07/2021

#慢性前立腺炎 の鍼治療

慢性前立腺炎は #肛門 から #会陰部 にかけての違和感や痛みが主症状ですが、患者によっては #睾丸や陰茎の痛み をともないます。
現代医学的には治し難い「慢性炎・慢性疾患」ですが、鍼治療が即効することが多いように思えます。
随伴症状に #痔 や #脱肛 #下痢し易い などがある場合が多く、鍼治療では、ほぼ、痔症状の治療と同じ様なツボ処方となります。痔の治療と同じと言いましても、痔の治療でも、肛門など直接的な患部局所には触れることはありませんし、また、見る必要もありません。したがって、私の治療では手足を肘膝まで出せれば着衣はそのままです。

患者は40歳台後半の男性です。極軽度の症状は4~5年前からあったそうですが、ここ数ヶ月で急激に痛みと違和感が強くなったと言います。
現在、泌尿器科の処方薬にて強い痛みは軽減していると言いますが、会陰部から陰囊、睾丸、陰茎に痛みがあり、亀頭部にもピリピリとした痛みが絶えずあるそうです。
肛門付近の違和感は、痔疾患があるためどちらが原因で起きているの分からないと言います。痔なのに便秘ではなくいつも下痢か軟便だとも言います。

治療の目標は、
「会陰部肛門直腸付近の血流改善・浮腫の除去」です。これは現代医学の診断名が「慢性前立腺炎」であろうと「痔疾患」であろうとどちらに対しても治療効果を現します。

下焦の症状の原因になりやすいものに #湿 ないし #湿熱 を考えなければなりません。湿は重い陰性の邪気ですから、下降性の性質から下に溜まりやすことになります。女性の泌尿生殖器の症状なども湿熱が原因することほとんどですが、男性の慢性前立腺炎も然です。
脈を診ますが、舌を先に診ておくことがよいでしょう。
この患者では、舌診は・・・
 舌質:淡紅やや暗紫
 舌苔:白く厚く湿っているが滑潤ではなく腐苔(豆腐糟が覆っているよう)
脈診では・・・・
 脈  状:柔らく弱く虚している感触
 六部定位: 右関上は、緩虚
       右寸口は、やや強い(右寸口としては)
       左尺中は、沈細数やや有力
腹診では・・・・・
 臍の左:なし
 臍の右:張りが強く圧痛は極軽度
 臍の上:押圧にて重い(中脘から臍にかけて)
     心窩部では特になし
 臍の下:やや虚陥ぎみ

募穴診・切経では・・・・・
 臍の右に張りと圧痛があったため、
  中府付近:両側とも小胸筋など著しく硬く圧痛あり
  手太陰肺:尺沢付近なし、孔最硬結左強く右軽度
  *呼吸器系の症状疾患を問うが特になしと言う。
 不眠を訴えるが
  手少陰心、手厥陰心包には著明な反応なし
 その他、項部天柱穴付近頭半棘筋左に硬結圧痛あり

 ~~~以上のことから鍼治療を組み立てて行く~~~

先ずは、腹診の「臍の右」の張りと圧痛
 ご存知のとおり、臍を中央「土・脾胃」左を東「木・肝胆」右を西「金・肺大腸」上(心窩部)を南「火・心小腸」下を北「水・腎膀胱」と見ます。
この患者では、臍の右「肺大腸」に何らかの「実」的症状があるものと想像できます。中府や孔最に反応を認めますが、患者自身には自覚症状はありません。いわゆる「未病」が隠れているのかも・・・?・・・知れませんが、痔を大腸の症状に含めれば臍の右に反応があっても良いでしょうし、慢性前立腺炎以前から下痢や軟便になりやすかったと言います。
先ず、
① 左曲池と右上巨虚に刺鍼し、双手瀉法を加え、臍の右の張りと圧痛の変化を見ます。軽減感ありです。
次に
② 両側孔最刺鍼し瀉法を加え、中府付近の硬結圧痛の改善と右寸口の脈の変化(肺の脈は浮いて弱めの拍動です)を確認します。
次に
③ 両側陰陵泉に刺鍼し瀉法を加え、湿邪を除去します。コロナでマスク着用のため舌苔の変化を治療中に確認できませんが、右関上の脈に胃の気の脈が起これば「湿濁困脾」状態で弱っていた脾気が、湿邪が除かれて回復したことになります。
次に
④ 三陰交、照海、内庭(全て両側)に刺鍼し瀉法に透天涼の手技を加えます。左尺中の脈が細数やや有力であったため、数は熱ですので、熱を除く透天涼の手技を加えます。脈状の落ち着くのを確認します。照海は足少陰腎経のツボです。内経には「腎は二陰をつかさどる」と記されています。また、照海は陰蹻脈に通じます。②で用いた孔最穴の手太陰肺経は列缺穴で任脈と通じています。瀉法にて腎経と肺経の経気を促通させることは、列缺穴へ刺鍼しない場合でも、陰蹻脈・任脈の流れを促す効果があります。
次に
⑤ 左項部天柱付近の頭半棘筋の硬結圧痛を除きますが、天柱は足太陽膀胱経です。前立腺は膀胱の出口で尿道の始まりですから膀胱経とも係わるっているでしょう。それ以上に手太陽小腸経の同類経脈で一本の強い流れとなっています。さらに手太陽の後谿穴は督脈を動かす力を持っています。また、督脈は、会陰・曲骨から始まる任脈と表裏の関係にあると考えられます。表が動けば裏も動きます。足太陽膀胱経の申脈と手太陽小腸経の後谿(ともに左側)へ刺鍼し双手瀉法します。天柱付近の硬結圧痛の軽減を確認します。硬結圧痛が残るようであれば第2・第3の頚椎側刺鍼を加えます。私見ですが、項部や頚椎上部の硬結圧痛があると交感神経の緊張を亢進させる(交感神経の緊張を引き起こしやすい)のではないかと思います。
⑥ 百会に刺鍼。「上病は下に取り、下病は上に取る」と言うことからですが、痔疾患などでは百会一穴で違和感が治まることもあり・・・古典に書かれたことは、侮れません。

~~~初診時の一回目の治療を終えて、患者さんが言うには
来院のため『電車に乗っている時も肛門の違和感と会陰部から睾丸、陰茎が痛かったんですが、今はすっかり無くなりました。』と・・・。

最後に舌を見せてもらうと、白く厚く舌本体の血色が全く見えなかった舌苔が薄白(薄く白い)に変わっていました。
脈状も、胸腹部の硬結圧痛も、手足の主要穴の運用できれい調うことがこの結果につながります。

患者は当院へ受診の前、都心の有名?鍼灸院での治療を受けたようで、『打った針に電気を流さなくいいのですか?』と質問して来ました。
通電の必要は全くありません。

23/07/2021

#手小指のしびれ …の患者さん、2週間後再診に来院しました。

先ず、前回同様に治療し頚肩部の緊張(筋硬結、圧痛)を取り除きます。

次に、坐位に変わり、小指のしびれに関係する第8頸神経の頚椎側刺鍼を行います。
小指の知覚は第8頸神経ですから、第7頚椎と第1胸椎の間になります。
仰臥位や伏臥位では僧帽筋など頚肩部の筋肉や皮下脂肪などに覆われ骨指標を触れて確認できません。
坐位になることで、鎖骨上窩の内側に第1肋骨が分かります。頚椎横突起から伸びる前・中斜角筋はこの肋骨のほぼ中央に付着しています。この付着部の後方へ第1肋骨に沿って触れて行くと、前・中斜角筋の直ぐ後ろは第2肋骨へ付着する後斜角筋に覆われて第1肋骨は触れません。この後斜角筋を超えて第1肋骨を触れるとその直後に第1胸椎横突起の肋骨結節に触れることができます。この結節を骨指標に第8頸神経の刺鍼を行います。第1胸椎横突起は、後正中線から外方へ60度の角度で開いています。したがって、この結節から矢状線に対して60度の角度で頚椎方向へ刺鍼して行きます。
患者さんは「しびれが半減した」と言います。

18/07/2021

#離人症 #鬱症状 #右半身知覚鈍麻 #視覚異常 #聴覚異常 #右眼周囲違和感 #右側頚部から肩上部の張り 

離人症の患者さん、1ヶ月振りに来院しました。

患者さんは20代女性です。高校から大学受験のころより離人症(精神科医師による診断)となり、右半身が自分の体ではないように感じると言います。触られた感触も左はクリアーなのに対し右半身は上肢も下肢も体幹部も鈍くはっきりしないと言います。
眼(視覚)の違和感は視ているものにピントが合わない、視てはいても意識を集中して視ることができないと言います(対象意識面の障害)。
聴覚の異常も聞こえているのは分かるが音にピントが合わない(眼の違和感と同じく対象意識面の障害)と言い、聴覚検査では正常だったそうです。
また、右眼窩周囲(特に下眼窩から頬骨かけて)から前頭部コメカミに重い違和感があり、押すと痛みがあると言います。
また、右側頸部から肩上部にかけて張った感じがあり、触診すると左に比べて右肩上部僧帽筋の筋緊張が強くいわゆる凝りを認めますが、この凝っている筋を押してもつまんでも、痛くなければ気持ち良くもなく感覚がないと言います。

ほぼ1ヶ月前来院、治療後はしばらく右半身の知覚鈍麻以外は気にならず過ごせると言う。

脈診で全体的感触の脈状は、細弱で虚の感触でやや数サクの傾向。六部定位脈診では、右関上浮緩虚、左寸口弱虚(本来ならば盛夏のこの時期旺気すべき心の脈)、左尺中沈位有力、左関上特に目立たない…などでした。
舌診では、舌質淡くやや小さく、舌苔白厚やや滑。
食欲なく、胃部中脘圧迫にて重苦しく不快。
切経では、手少陰心経少海付近硬結圧痛なし、手厥陰心包経曲沢付近硬結圧痛有り。
その他、膝蓋跳動:右(+++) 左(++)膝関節に水が溜まっているが痛みはなく、生活上気にならないと言う。
・・・以上から分かること・・・
右下眼窩から頬骨の「重い」違和感、食欲不振、中脘圧迫時の重い不快感、膝関節の水腫、六部定位脈診右関上「浮緩虚」などから…
◆水湿の邪気による脾胃の変調
鬱症状と離人症はともに精神性をつかさどる心神の変調、左寸口弱虚、舌質淡くやや小さい、
また、夏日の昼来院し暑がっていたにもかかわらず皮膚蒼白であった。などから…
◆心血虚…を予想
生理は遅れるもしくは経血量が少ないか?と訊く「先月は多かった」と言う。今回、体調悪くなり出したのは7月になってからで、生理の後のようです。生理で経血量が多ければ、その後の血虚はあり得ます。経血量が多かったことの原因は、脈状のやや数サクから「熱」、六部定位脈診左尺中沈位有力と何か関係ありそうです。
【治療】
①先ず、臓腑経絡的治療として
左曲池-右足三里双手瀉法。
足三里瀉、陰陵泉瀉後平補平瀉。
照海瀉。内関瀉。
少陽経双手瀉法。
三陰交瀉加透天涼後平補、神門補。
②次に頚椎側刺鍼にて頚肩部の緊張を除く
両側、第2、3、4、頚椎側
(寸3-2番鍼を関節突起側から横突起後結節へ向けるように矢状方向に刺鍼し、同所の圧痛除去を確認する。)
刺鍼後、軽く頚部徒手牽引を加える。
③聴覚症状は左右差なく両側同じと言うため、①の両側少陽経双手瀉法に用いた手少陽三焦経外関、完骨、耳門瀉
眼症状右のみ、攅竹から睛明へ向けるように1寸-0番鍼3~5mm平刺、瞳子髎移動穴とし眼窩骨の外に目尻から太陽穴へ向け平刺。
両側風池瀉。左風池から右申脈イオンパンピンクコード。
攅竹-睛明から右足三里(または内廷)同。
外関から完骨へ同、両側。

【治療後】
治療後は視覚聴覚症状はなくなり、右頚肩部の張り凝りもなくなり、右肩上部僧帽筋を摘まんだ痛さが解るようになったと言います。右半身全体の知覚鈍麻感は不変のようです。
また、両側膝関節の水腫軽減
膝蓋跳動・右(+++) → (++)
    ・左( ++ ) → ( + )
・・・・・・・・・・でした。

【備考・注意】
* 脈状を確認しつつ適宣補瀉を行う。
* 鬱症状では、脈有力のときには気鬱(弦脈、臍の左の張り圧痛、脇が張るなと肝気鬱滞症状)がある場合と、心気虚(心気が虚すと心楽しまず、精神不安、無気力)となる場合がある。脈有力であれば疏肝理気の瀉法を優先するが、脈虚では「湿」なと軟・濡・弛緩など虚系の脈状を示す邪気の存在に患者の症状や舌診を通じて注意し、邪気が有ればこれを先ず除き、脈気の回復が不十分ですあれば虚を補います。粘着性の湿邪を瀉法せずに補法を加えると、邪気を内へ追い込む誤治となります。腎虚として腎を補えば、湿は「土」の属性で、腎は「水」の属性ですから「土剋水」の関係となり腎が「賊邪の土」襲われることになります。粘着質で除き難い「湿」を「腎は封臓、蔵して漏らさず」へ追い込むことが良いかどうかは問うまでもありません。

22/06/2021

患者(50代男性)は
「生きかえりました」と言って帰って行きました。

主訴は
右肩上部僧帽筋から肩甲挙筋部に痛みがあり、ときに同側小指にしびれが出ると言います。

整形外科で頸椎のX−Pを撮り、医師から「椎間が少し狭くなっている」と加齢的変化を指摘されたと言いますが、7つある頸椎の何番目と何番目の間と言われたかは覚えていません。
肩甲挙筋の痛みの原因であれば第5頸椎前後、小指のしびれなら第7頸椎前後です。

頸を後屈(顔を上へ向けた姿勢)で頭を上から下へ押さえて頸椎の椎間を圧迫するジャクソン(Jackson)テストを行います。すると、肩甲挙筋付近の痛みは増悪しますが、小指のしびれは誘発されませんでした。
肩甲挙筋の支配神経は第4第5頸神経ですから、問題は5番前後にあるようです。

頸肩腕部の筋肉の硬結(凝り)と圧痛(押すと痛い)を右患側と左健側を比較しながら調べると、頸椎の2〜3番に関連が強い頭半棘筋(項のところの筋)は左右とも硬結も圧痛も大したことありません。頸椎の4〜5番に関連が強い肩甲挙筋には、右患側に強い硬結と圧痛があり左健側はなし、頸椎の5〜6番に関係する上腕二頭筋にも右患側に硬結と圧痛が強く、左健側にはなしです。前腕部の屈筋と伸筋では右患側よりも左健側の伸筋に硬結と圧痛があり、手を使っていて左手伸筋部が痛くなることがあるとも言います。
頸椎の左側、右側それぞれの神経の圧迫を診るテスト、顔を左(または右)斜め上を見上げるように向け頭の上から押さえて頸椎を圧迫する(Spurling)テストを行ってみましたが、右側で肩甲挙筋部の痛みが増す以外は手や指、前腕部への影響は見られませんでした。

脈やや滑にせてやや数(サク脈拍数90/分)、六分定位脈診 右関上滑やや有力(左関上尺中は虚)舌は胖大歯痕无 舌質の色淡紅やや赤くやや暗、苔潤滑。

・・・などから……
治療は
( 1 )まず、脈診と舌診から
曲地 足三里 内庭 陰陵泉(瀉)* 六分定位で弱いところを探すと、たいがい左尺中が弱いか、これに左関上も合わせて弱いか・・・のことが多い。これを腎虚、または腎肝虚として補うことは、誤治となる場合が多いように思う。飽食の時代、陽明腑実証的な患者が多く、この男性患者は右関上やや有力であったが、飲食による「甘味」や内外の「湿」の影響で脈状緩軟濡弱など虚に触れることが多くある。舌診での判断を加えず、虚を補えば「湿邪」「濁陰」を内側へ追いやる結果となる。腎を補えば「湿邪」は「土」、腎は「水」、「土克水」の賊邪を腎に押し込むことになる。このような誤治を繰り返せば、患者は慢性腎不全にもなりかねないのではないだろうか? 経曰く『腎は封臓、溜めて漏らさず』虚することはあまりないのではないか?それよりも、追い込まれた湿邪は抜き出すことができなくなりはしないか?
腎を補わなくとも、陽明胃経や脾経を瀉法し湿をが取り除かれると、左尺中の腎の脈気は回復する。
( 2 )次に、問題のある経脈
右側手足太陽経 と 左右の手足の少陽経を双手瀉法
………以上で、右肩上部僧帽筋の硬結圧痛はほぼ半減、左前腕伸筋の硬結圧痛はほぼ消失……
( 3 )頸椎側刺鍼法
第3/4/5/6の各頸椎椎間関節の関節突起側から横突起後結節へ向けて刺鍼する。肩上部僧帽筋の硬結圧痛、肩甲挙筋の硬結圧痛、上腕二頭筋の硬結圧痛の消失を確認目標とする。
( 4 )硬結圧痛が消失したら
仰臥位の姿勢のまま頸椎の徒手牽引を行い…枕についての注意を与え終了です。

22/06/2021

患者(50代男性)は
「生きかえりました」と言って帰って行きました。

主訴は
右肩上部僧帽筋から肩甲挙筋部に痛みがあり、ときに同側小指にしびれが出ると言います。

整形外科で頸椎のX−Pを撮り、医師から「椎間が少し狭くなっている」と加齢的変化を指摘されたと言いますが、7つある頸椎の何番目と何番目の間と言われたかは覚えていません。
肩甲挙筋の痛みの原因であれば第5頸椎前後、小指のしびれなら第7頸椎前後です。

頸を後屈(顔を上へ向けた姿勢)で頭を上から下へ押さえて頸椎の椎間を圧迫するジャクソン(Jackson)テストを行います。すると、肩甲挙筋付近の痛みは増悪しますが、小指のしびれは誘発されませんでした。
肩甲挙筋の支配神経は第4第5頸神経ですから、問題は5番前後にあるようです。

頸肩腕部の筋肉の硬結(凝り)と圧痛(押すと痛い)を右患側と左健側を比較しながら調べると、頸椎の2〜3番に関連が強い頭半棘筋(項のところの筋)は左右とも硬結も圧痛も大したことありません。頸椎の4〜5番に関連が強い肩甲挙筋には、右患側に強い硬結と圧痛があり左健側はなし、頸椎の5〜6番に関係する上腕二頭筋にも右患側に硬結と圧痛が強く、左健側にはなしです。前腕部の屈筋と伸筋では右患側よりも左健側の伸筋に硬結と圧痛があり、手を使っていて左手伸筋部が痛くなることがあるとも言います。
頸椎の左側、右側それぞれの神経の圧迫を診るテスト、顔を左(または右)斜め上を見上げるように向け頭の上から押さえて頸椎を圧迫する(Spurling)テストを行ってみましたが、右側で肩甲挙筋部の痛みが増す以外は手や指、前腕部への影響は見られませんでした。

脈やや滑にせてやや数(サク脈拍数90/分)、六分定位脈診 右関上滑やや有力(左関上尺中は虚)舌は胖大歯痕无 舌質の色淡紅やや赤くやや暗、苔潤滑。

・・・などから……
治療は
( 1 )まず、脈診と舌診から
曲地 足三里 内庭 陰陵泉(瀉)
( 2 )次に、問題のある経脈
右側手足太陽経 と 左右の手足の少陽経を双手瀉法
………以上で、右肩上部僧帽筋の硬結圧痛はほぼ半減、左前腕伸筋の硬結圧痛はほぼ消失……
( 3 )頸椎側刺鍼法
第3/4/5/6の各頸椎椎間関節の関節突起側から横突起後結節へ向けて刺鍼する。肩上部僧帽筋の硬結圧痛、肩甲挙筋の硬結圧痛、上腕二頭筋の硬結圧痛の消失を確認目標とする。
( 4 )硬結圧痛が消失したら
仰臥位の姿勢のまま頸椎の徒手牽引を行い…枕についての注意を与え終了です。

15/06/2021

患者は「右半身の感覚が鈍く自分の身体でないようだ*'」と言う。
数年前、精神科で「離人症」との診断を受け、現在は回復していると言う。*'この半身の感覚が鈍くなるのは、離人症の患者に多く起こる症状だと言う。

当院受診の主訴は、視覚の症状「眼のピントが合わない」「視ているのは分かるが注視できていない」「視ている現実感がない」など(離人症の視覚症状のよう)だが、とともに、視覚の症状があるときに同時に聴覚にも同様の「音にピントが合わない」と言う症状があり、頚肩が凝ると言うもの。

感覚が鈍い右半身は、重だるさがあり、眼の周りからコメカミかけても重くだるい感じがする。
耳も耳管閉塞のような塞がった感じがすると言う。

今回の5回目の治療となるが、鍼治療の後は、眼の調子が良く、耳も楽になると言う。ただし、右半身の知覚の鈍さは変わらないと言う。

*******************************

【鍼治療】
この患者で特徴的なのは「重だるい」と言う感覚てす。
脈診では、緩虚(ないし、濡)、六分定位脈診 : 右関上緩弱 左寸関尺虚。
舌診では、胖大歯痕なし淡紅やや赤い、苔は湿潤
・・・などから、
足三里瀉 陰陵泉平瀉平補 を先ず行い風湿を除き(後に、内庭瀉を加え若干の熱を除く)、次に脳神経と精神の問題であるので 照海瀉 神門瀉 とした(神門瀉は切経にて手少陰の硬結圧痛を診て、瀉法にてこの軽減消失を確認することが重要)。
・・・ここまでの手足の刺鍼で頚肩の凝りはほぼ消失した。
頚部、頚椎椎間関節部の触診を丁寧に行い、肩から上肢の筋緊張を合わせて触診し「頚椎側刺鍼法(私法)」にて筋緊張を解消します。
眼の攅竹から晴明へ向け刺鍼(0番1寸を3mm抜けない程度の刺鍼でよい)瞳子髎を眼窩の外に取り太陽穴へ向け刺鍼、手足少陽足臨泣・外関を双手瀉法し、手少陽耳脈のため外関と完骨双手瀉法、耳門、風池に刺鍼。

#離人症 #感覚異常 #半身知覚鈍麻 #視覚異常 #聴覚異常

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