鍼灸医学の門(鍼聖岐伯)

鍼灸医学の門(鍼聖岐伯)

Facebookページ「鍼灸医学の門」は、私の鍼灸治療について具体的に説明するもので、鍼灸医学知識を持った専門家を対象に書かれています。    

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01/02/2022

患者(52才女性)は、頚肩部が張って頭痛がすると言います。

項部頭半棘筋(左右とも)硬結・圧痛があり、肩上部僧帽筋に張りがあり、特に右側強い張り。

両側三角筋を把握すると右側に硬結が強く左に比べわずかに筋肉の膨らみが劣る。上腕二頭筋も右側に張りが強く筋スジ張バった感触があり圧痛あり。

脈診(脈状)…浮緊やや有力
舌診…舌質淡紅色
   舌苔薄白中央やや厚い

脈状と舌苔からは、表に風寒の邪気を受けたための頚肩部の張り…として…

曲池(瀉)後谿(瀉)を主とし、手陽明曲池に足陽明の足三里(瀉)を配す。これは、舌苔中央やや厚いの中焦の水湿停滞の除去にも共通し、頭痛のあるコメカミ付近は足陽明の経路にあたります。
手太陽の後谿(瀉)は開表し、表に着いた邪気を払う。これに足太陽の申脈を配すと項部の張りは即効的に緩解します。

頚肩部の硬結・圧痛が充分に消えない場合、頚椎側刺鍼法で対処します。
頚肩部の触診の段階で、頚椎を触診して置きましたが、この患者では椎間関節付近の硬結が強く、ゴツゴツとした感触と強い圧痛がありました。
右側三角筋と上腕二頭筋の硬結が強いため、「右腕が上げ難くないですか?」と訊くと『上げ難くかった』と応えます。右側は肩凝りと言うより、五十肩の初期段階です。

頚椎側刺鍼法は、硬結・圧痛を確認しながら先ず、椎間関節側の後方から上下の関節突起の境目に沿って前へ横突起後結節に向けるような角度(ほぼ矢状方向)で刺入し、ズンとした鍼感を得るようにします。これは、主に頚神経後枝を刺激すると思われますが、関節突起に着く自所的筋群の緊張硬結を解くとともに、脊髄内から中枢の反応によりその高さから出る前肢の運動神経支配の筋緊張をも緩めます。
頚椎側刺鍼法の第2法として、頚椎横突起後結節に圧痛が残る場合、この後結節から直刺しズンとした鍼感を得ます。特に肩関節の運動に関わる筋群へ運動神経を出す第4、第5、第6頚椎では頚椎側刺鍼とその高さから運動神経を受ける筋の硬結・圧痛点への刺鍼とを双手瀉法します。特に、外転挙上し難いものには三角筋の硬結・圧痛と大結節付近の圧痛、ならびに棘上筋に刺鍼し頚椎側刺鍼と双手瀉法します。

23/12/2021

霊枢「経脈篇」で繰り返して書かれ、強調されていることがこの「治療原則」です。
『盛則寫之虚則補之熱則疾之寒則留之陷下則灸之不盛不虚以經取之』
この治療原則では、
先ず、虚実補瀉(寫)を行う「盛則寫之虚則補之」。盛(実)なれば之を寫し…と、実を瀉すことを先に記述しています。
つづけて、虚なれば之を補うとなっています。
「盛(実)」を取り除く瀉の方法を、病状を寒熱に分け、熱であれば之を疾く(すばやく速刺速抜)し、寒であれば之を留め(置鍼)るとしています。
実際には、更に表裏や風寒暑(熱)湿によって用いる経脈経穴が決められます。虚実夾雑のことも多くあります。
虚の場合、陷下(陥凹)していれば之に灸す。
以上のように、虚実寒熱への対処を優先し…
次に、「不盛不虚以經取之」虚せず実(盛)せずであれば(虚実が無ければ)、経(経脈、病変・変動のある経脈)に之を取る…と言っています。

探していた《黄帝内経「霊枢」》を積み重なった書類の下から掘り出した・・・のだが、
『・・・爲此諸病。盛則寫之虚則補之熱則疾之寒則留之陷下則灸之不盛不虚以經取之。』
『・・・爲此諸病(これら諸病を為す)』以下の、正確な記述を確かめたかったからだ。
これは、言わずもがな《霊枢・経脈篇第十》の各経脈の流注・是動病・所生病の説明の文末に判で押したように記される治療原則です。

21/12/2021

探していた《黄帝内経「霊枢」》を積み重なった書類の下から掘り出した・・・のだが、
『・・・爲此諸病。盛則寫之虚則補之熱則疾之寒則留之陷下則灸之不盛不虚以經取之。』
『・・・爲此諸病(これら諸病を為す)』以下の、正確な記述を確かめたかったからだ。
これは、言わずもがな《霊枢・経脈篇第十》の各経脈の流注・是動病・所生病の説明の文末に判で押したように記される治療原則です。

05/11/2021

#離人症 #うつ傾向 #知覚異常 #視覚異常 #聴覚異常 #右半身知覚鈍麻 #

患者(20代女性)は、高校時代大学受験を機に離人症を発症。以降、右半身の知覚(触圧覚)鈍麻と視覚、聴覚の異常(共に「ピントが合わない」と言う)が続いている。
当院受診後、月1~2回鍼治療していると症状は軽く過ごせ、ときに忘れていられると言う。
今回、1ヶ月半ほど受診できず、症状増悪となった。

脈 : 浮いて緩虚
舌 : 淡紅やや淡い歯痕なし、やや舌が小さい。
苔 : 白薄やや少津
肌の色 : 白過ぎるぐらい白く、やや湿っている。顔色 : メークしているが、額がやや赤みが強く感じる。額角から頬に吹出物(ニキビ)が赤紫色。生理遅延している。
その他、頚肩部が凝っていると言うが、右僧帽筋肩井穴付近に極軽度の筋緊張亢進がある程度。項部天柱穴付近頭半棘筋は、硬結や筋緊張を認めるほどではないが、圧痛ありと言う。頭頂部、側頭部は、張った感じを訴え、圧痛があります。
眼は、視点を注視できなくなり『視ているけどピントが合わない』と言い、今回この症状が増悪して来ると同時に『眼がパサパサして来た』と眼の乾きを訴えます。

脈が浮いてやわらかく虚していることから、気虚・陽虚です。皮膚の白色は体表を巡る陽気の不足のためで、この為、体表を引き締め固める力が低下しますから、汗が漏れ易くなり肌は湿っています。
また、浮いて中位沈位に脈が触れないことは陰分も虚しています。

眼は、明、火に属し、視覚的認知認識は心神の働きです。
また、鬱傾向や鬱病の症状「こころ楽しまず」は心気虚です。

額がやや赤いのは、虚陽上浮的熱か? このため眼の乾き(パサパサする)など…。

治療は、太谿穴補にて腎陰・腎精・腎気・元陽を補い、三陰交穴補を加え精血を補います。これに神門穴補を加え心気・心血を補うことになります。すると、白色で血色のなかった皮膚に赤味がさしてきます。
手足陽明、足三里穴・曲池穴瀉法にて額や眼、前頭部の熱を除き、顔面陽明部の経気の促通を図ります。
足太陽経申脈穴瀉法にて項部の圧痛過敏を除き、第2頚椎側刺鍼にて大後頭神経(頭頂部知覚)後耳介神経(側頭部知覚)を鎮静します。…頭頂部太陽経目窓穴・通天穴の圧痛軽減が明瞭でないため…手太陽後谿穴瀉を加え手足太陽双手瀉法とする。同圧痛消失を確認。
攅竹穴から睛明穴へ向け(1寸 − 0番針)抜けない程度に平刺しイオン-パンピング-コードで申脈穴へ繋げ太陽経脈の促通を強化し、風池穴左右交差して申脈へ繋げ、目窓穴に刺鍼を加える。

耳は手少陽三焦経(太素に言う耳脈)外関穴・完骨穴双手瀉法す。患者はこの瞬間から『耳の聴こえがよくなる』と言う。足少陽胆経足の臨泣穴と外関穴、完骨穴それぞれ双手瀉法し、外関穴ー完骨穴をイオンパンピングコードにて繋げ、耳門穴、角孫穴に刺鍼をくわえる。
また、右側の手足少陽経双手瀉法を行うと、離人症による右下肢外側知覚鈍麻に若干の変化(触れられる感覚が少し解りやすくなる)が起こるようです。

脈状を確認しながら、太谿穴・三陰交穴・神門穴補法を繰り返す。

時間とともに、眼と耳の感覚はハッキリしてきますが、右半身の知覚鈍麻は若干の変化に留まります。

05/09/2021

#五十肩 #肩関節周囲炎
何故起こるか? 原因を加齢による変化…と言ってしまえば簡単だが…。
私が考える…発症のメカニズムは、頚椎の加齢的変化(椎間板が薄くなったり、椎体の角が肥厚=骨棘形成)により頚神経が、圧迫・牽引され易くなり興奮性が高まる(過敏になる)。神経の興奮性が高まると、運動神経支配域の筋緊張が高まる。これが続くと筋の血行不良、筋疲労、筋硬結等が起こる。
これは、椎間板の障害や変形性の障害が出やすい第5~6頚椎前後で顕著に現れやすいものと思われる。
頚椎横突起に付く斜角筋や、関節突起に付く多裂筋など頚神経後枝支配の自所的筋群の硬結状態が続くと、神経の圧迫・牽引は更に著しくなる。
肩関節の運動(上腕の運動)に関わる上肢帯の筋群を支配する運動神経は、全て第4.5.6.頚神経(前肢)であるが、五十肩や肩関節周囲炎の患者では、必ずこの第4.5.6.頚神経の出る第4.5.6.頚椎の横突起部に強い圧痛を認める。
この強く押さえて痛むところを、押さえる強さを軽減して痛くなる手前程度に圧迫すると、ここからの神経(運動・知覚ともに)の興奮が抑制される。…すると、肩関節周囲の筋の緊張も低減し五十肩・肩関節周囲炎の運動痛も軽減し、押さえていると、痛くなく上肢を動かすことができる。
神経解剖学的視点からの鍼治療では、この第4.5.6.頚神経に対し頚椎側刺鍼法を施すことになる…。
肩甲連動があり、筋萎縮が著しいものは治癒に時間を要するが、運動・動作時痛のみであれば1~2回の治療でかなり楽な状態になる。…が、緩解期が長く続くか、短期間でまた再燃するかは個体差・生活状態の差によって異なる。また、腱や筋の不全断裂などの程度によってはある範囲を超えての動作時痛が再燃し易い。無理な運動負荷を避ける必要がある。
また、神経解剖学的鍼治療前に、東洋医学的アプローチで体調を整え、経脈の気の循環を改善して置くと良いことは言うまでもない…。
《参照 : http://xn--eck2by271apj3abbd.net/details1.html》

25/08/2021

後頭部左に #頭痛 である。わたくし自身のこと…。
支配神経では、左側 #大後頭神経 と #小後頭神経 の領域に感ずる。
このような頭痛の多くは、首(頸椎)との関係で起こる。
大・小の後頭神経はともに #第2頚神経 から出るが、第2頚椎関節突起から同椎横突起後結節に向けて圧診(圧痛を診る)すると、過敏な強い痛みがある。圧診の場所は概ね風池穴の下辺りだが、正確には、後頭骨乳様突起の直下から前方へ第1頚椎横突起を触れその下の出っ張りが第2頚椎横突起だ。第1の横突起は頭部の前屈状態では乳様突起の前へ位置(解剖学では乳様突起と下顎枝の間に第1の横突起が位置しているのがニュートラルらしい?)し、頭部の後屈姿勢では乳様突起の直下に近くなる。人によっては触れ難いこともある。鍼灸院へ来る患者では後頚部が凝って筋が突っ張り短縮しているためか?乳様突起の直下を前方へ押し探ると触れるぐらいの位置にある。
この第1頚椎横突起の下やや後ろに第2頚椎横突起の後結節の出っ張りが触れる。関節突起はこの後ろとなるが、後頭骨下縁風池穴付近から下方へ圧擦して骨に当たるところが第2頚椎の椎弓から関節突起上面の傾斜面となる。横突起後結節へ向けて前方へ押すと強い痛みがある。
簡単あんちょこに治療を済ませたければ、この押した位置・方向と同様に鍼を打つ「#頚椎側刺鍼法」を行うことで良いことになる。
また、後頭部の支配神経は、大後頭神経の他、第3頚神経からの第三後頭神経があり、第2頚椎側の刺鍼で天柱穴付近の圧痛が消えきらない場合、または、第3頚椎関節突起から横突起後結節方向へ押圧し痛みが強い場合は第3頚椎側刺鍼を行うことになる。
もっとも、これでもまだ圧痛や自覚症状が取れないことは多い。
鍼灸師成り立てのころ、簡単に早く治療を済ませることを考えていたが、天柱穴付近の頭半棘筋部の硬結(凝り)圧痛が頚椎側刺鍼の #支配神経からの鍼治療 で充分解消されなかったとき、手足の太陽経脈の刺鍼を加えたところ、たちどころに解消してしまった経験がある。
以降、#経絡的対応 を先ず施し、残った硬結圧痛の処置に支配神経からの刺鍼を付け足すかたちとなった。
#脈診 では、浮いて柔らかいがやや有力。
頭痛など上部の症状には「#風邪」が関わることがほとんど…で、頭自体「#頭木」で木風に分類されている。
脈の浮いている「浮は風なり」、柔らかい感触は「#湿邪」…風が吹いているが、かなり蒸し暑い気候であるためか…、#前頭部から眼にかけて重い 感じの痛みというほどでもない違和感がある。やや有力は体力抵抗力が充分あるということ…で。
#実証 であり、風湿の邪気を除くことになる。
曲池瀉にて風邪を除くと頭痛の感じは、軽減感あり(去風去湿両作用あり)。
足三里瀉にて湿邪を除くと、足三里の足陽明は眼から下るため前頭部や眼の重い感じが軽減する。
以上の #虚実調整 に更に #三陰三陽経脈の促通法 として、足太陽(膀胱経)申脈穴瀉を加えると、頭痛は半減する。
脈を確認し、浮いて柔らかくやや有力が「平脈」に変わっていれば、このあとに、先に述べた支配神経からの「頚椎側刺鍼法」を施す。この順の方が刺鍼の鍼感(ひびき)の痛さもやわらかくなる。

鍼聖跂伯 on Twitter 30/07/2021

鍼聖跂伯 on Twitter

鍼聖跂伯 on Twitter “患者は「#糖尿病 があるけど、#血糖値 や なんかはいいのよねぇ。でも、#慢性腎不全 で『#人工透析 の一歩手前だ』って言われてるの」と言い、#狭心症 もある。糖尿病は末梢血流が悪くなる病気で、そ.....

30/07/2021

#慢性前立腺炎 の鍼治療

慢性前立腺炎は #肛門 から #会陰部 にかけての違和感や痛みが主症状ですが、患者によっては #睾丸や陰茎の痛み をともないます。
現代医学的には治し難い「慢性炎・慢性疾患」ですが、鍼治療が即効することが多いように思えます。
随伴症状に #痔 や #脱肛 #下痢し易い などがある場合が多く、鍼治療では、ほぼ、痔症状の治療と同じ様なツボ処方となります。痔の治療と同じと言いましても、痔の治療でも、肛門など直接的な患部局所には触れることはありませんし、また、見る必要もありません。したがって、私の治療では手足を肘膝まで出せれば着衣はそのままです。

患者は40歳台後半の男性です。極軽度の症状は4~5年前からあったそうですが、ここ数ヶ月で急激に痛みと違和感が強くなったと言います。
現在、泌尿器科の処方薬にて強い痛みは軽減していると言いますが、会陰部から陰囊、睾丸、陰茎に痛みがあり、亀頭部にもピリピリとした痛みが絶えずあるそうです。
肛門付近の違和感は、痔疾患があるためどちらが原因で起きているの分からないと言います。痔なのに便秘ではなくいつも下痢か軟便だとも言います。

治療の目標は、
「会陰部肛門直腸付近の血流改善・浮腫の除去」です。これは現代医学の診断名が「慢性前立腺炎」であろうと「痔疾患」であろうとどちらに対しても治療効果を現します。

下焦の症状の原因になりやすいものに #湿 ないし #湿熱 を考えなければなりません。湿は重い陰性の邪気ですから、下降性の性質から下に溜まりやすことになります。女性の泌尿生殖器の症状なども湿熱が原因することほとんどですが、男性の慢性前立腺炎も然です。
脈を診ますが、舌を先に診ておくことがよいでしょう。
この患者では、舌診は・・・
 舌質:淡紅やや暗紫
 舌苔:白く厚く湿っているが滑潤ではなく腐苔(豆腐糟が覆っているよう)
脈診では・・・・
 脈  状:柔らく弱く虚している感触
 六部定位: 右関上は、緩虚
       右寸口は、やや強い(右寸口としては)
       左尺中は、沈細数やや有力
腹診では・・・・・
 臍の左:なし
 臍の右:張りが強く圧痛は極軽度
 臍の上:押圧にて重い(中脘から臍にかけて)
     心窩部では特になし
 臍の下:やや虚陥ぎみ

募穴診・切経では・・・・・
 臍の右に張りと圧痛があったため、
  中府付近:両側とも小胸筋など著しく硬く圧痛あり
  手太陰肺:尺沢付近なし、孔最硬結左強く右軽度
  *呼吸器系の症状疾患を問うが特になしと言う。
 不眠を訴えるが
  手少陰心、手厥陰心包には著明な反応なし
 その他、項部天柱穴付近頭半棘筋左に硬結圧痛あり

 ~~~以上のことから鍼治療を組み立てて行く~~~

先ずは、腹診の「臍の右」の張りと圧痛
 ご存知のとおり、臍を中央「土・脾胃」左を東「木・肝胆」右を西「金・肺大腸」上(心窩部)を南「火・心小腸」下を北「水・腎膀胱」と見ます。
この患者では、臍の右「肺大腸」に何らかの「実」的症状があるものと想像できます。中府や孔最に反応を認めますが、患者自身には自覚症状はありません。いわゆる「未病」が隠れているのかも・・・?・・・知れませんが、痔を大腸の症状に含めれば臍の右に反応があっても良いでしょうし、慢性前立腺炎以前から下痢や軟便になりやすかったと言います。
先ず、
① 左曲池と右上巨虚に刺鍼し、双手瀉法を加え、臍の右の張りと圧痛の変化を見ます。軽減感ありです。
次に
② 両側孔最刺鍼し瀉法を加え、中府付近の硬結圧痛の改善と右寸口の脈の変化(肺の脈は浮いて弱めの拍動です)を確認します。
次に
③ 両側陰陵泉に刺鍼し瀉法を加え、湿邪を除去します。コロナでマスク着用のため舌苔の変化を治療中に確認できませんが、右関上の脈に胃の気の脈が起これば「湿濁困脾」状態で弱っていた脾気が、湿邪が除かれて回復したことになります。
次に
④ 三陰交、照海、内庭(全て両側)に刺鍼し瀉法に透天涼の手技を加えます。左尺中の脈が細数やや有力であったため、数は熱ですので、熱を除く透天涼の手技を加えます。脈状の落ち着くのを確認します。照海は足少陰腎経のツボです。内経には「腎は二陰をつかさどる」と記されています。また、照海は陰蹻脈に通じます。②で用いた孔最穴の手太陰肺経は列缺穴で任脈と通じています。瀉法にて腎経と肺経の経気を促通させることは、列缺穴へ刺鍼しない場合でも、陰蹻脈・任脈の流れを促す効果があります。
次に
⑤ 左項部天柱付近の頭半棘筋の硬結圧痛を除きますが、天柱は足太陽膀胱経です。前立腺は膀胱の出口で尿道の始まりですから膀胱経とも係わるっているでしょう。それ以上に手太陽小腸経の同類経脈で一本の強い流れとなっています。さらに手太陽の後谿穴は督脈を動かす力を持っています。また、督脈は、会陰・曲骨から始まる任脈と表裏の関係にあると考えられます。表が動けば裏も動きます。足太陽膀胱経の申脈と手太陽小腸経の後谿(ともに左側)へ刺鍼し双手瀉法します。天柱付近の硬結圧痛の軽減を確認します。硬結圧痛が残るようであれば第2・第3の頚椎側刺鍼を加えます。私見ですが、項部や頚椎上部の硬結圧痛があると交感神経の緊張を亢進させる(交感神経の緊張を引き起こしやすい)のではないかと思います。
⑥ 百会に刺鍼。「上病は下に取り、下病は上に取る」と言うことからですが、痔疾患などでは百会一穴で違和感が治まることもあり・・・古典に書かれたことは、侮れません。

~~~初診時の一回目の治療を終えて、患者さんが言うには
来院のため『電車に乗っている時も肛門の違和感と会陰部から睾丸、陰茎が痛かったんですが、今はすっかり無くなりました。』と・・・。

最後に舌を見せてもらうと、白く厚く舌本体の血色が全く見えなかった舌苔が薄白(薄く白い)に変わっていました。
脈状も、胸腹部の硬結圧痛も、手足の主要穴の運用できれい調うことがこの結果につながります。

患者は当院へ受診の前、都心の有名?鍼灸院での治療を受けたようで、『打った針に電気を流さなくいいのですか?』と質問して来ました。
通電の必要は全くありません。

18/07/2021

#離人症 #鬱症状 #右半身知覚鈍麻 #視覚異常 #聴覚異常 #右眼周囲違和感 #右側頚部から肩上部の張り 

離人症の患者さん、1ヶ月振りに来院しました。

患者さんは20代女性です。高校から大学受験のころより離人症(精神科医師による診断)となり、右半身が自分の体ではないように感じると言います。触られた感触も左はクリアーなのに対し右半身は上肢も下肢も体幹部も鈍くはっきりしないと言います。
眼(視覚)の違和感は視ているものにピントが合わない、視てはいても意識を集中して視ることができないと言います(対象意識面の障害)。
聴覚の異常も聞こえているのは分かるが音にピントが合わない(眼の違和感と同じく対象意識面の障害)と言い、聴覚検査では正常だったそうです。
また、右眼窩周囲(特に下眼窩から頬骨かけて)から前頭部コメカミに重い違和感があり、押すと痛みがあると言います。
また、右側頸部から肩上部にかけて張った感じがあり、触診すると左に比べて右肩上部僧帽筋の筋緊張が強くいわゆる凝りを認めますが、この凝っている筋を押してもつまんでも、痛くなければ気持ち良くもなく感覚がないと言います。

ほぼ1ヶ月前来院、治療後はしばらく右半身の知覚鈍麻以外は気にならず過ごせると言う。

脈診で全体的感触の脈状は、細弱で虚の感触でやや数サクの傾向。六部定位脈診では、右関上浮緩虚、左寸口弱虚(本来ならば盛夏のこの時期旺気すべき心の脈)、左尺中沈位有力、左関上特に目立たない…などでした。
舌診では、舌質淡くやや小さく、舌苔白厚やや滑。
食欲なく、胃部中脘圧迫にて重苦しく不快。
切経では、手少陰心経少海付近硬結圧痛なし、手厥陰心包経曲沢付近硬結圧痛有り。
その他、膝蓋跳動:右(+++) 左(++)膝関節に水が溜まっているが痛みはなく、生活上気にならないと言う。
・・・以上から分かること・・・
右下眼窩から頬骨の「重い」違和感、食欲不振、中脘圧迫時の重い不快感、膝関節の水腫、六部定位脈診右関上「浮緩虚」などから…
◆水湿の邪気による脾胃の変調
鬱症状と離人症はともに精神性をつかさどる心神の変調、左寸口弱虚、舌質淡くやや小さい、
また、夏日の昼来院し暑がっていたにもかかわらず皮膚蒼白であった。などから…
◆心血虚…を予想
生理は遅れるもしくは経血量が少ないか?と訊く「先月は多かった」と言う。今回、体調悪くなり出したのは7月になってからで、生理の後のようです。生理で経血量が多ければ、その後の血虚はあり得ます。経血量が多かったことの原因は、脈状のやや数サクから「熱」、六部定位脈診左尺中沈位有力と何か関係ありそうです。
【治療】
①先ず、臓腑経絡的治療として
左曲池-右足三里双手瀉法。
足三里瀉、陰陵泉瀉後平補平瀉。
照海瀉。内関瀉。
少陽経双手瀉法。
三陰交瀉加透天涼後平補、神門補。
②次に頚椎側刺鍼にて頚肩部の緊張を除く
両側、第2、3、4、頚椎側
(寸3-2番鍼を関節突起側から横突起後結節へ向けるように矢状方向に刺鍼し、同所の圧痛除去を確認する。)
刺鍼後、軽く頚部徒手牽引を加える。
③聴覚症状は左右差なく両側同じと言うため、①の両側少陽経双手瀉法に用いた手少陽三焦経外関、完骨、耳門瀉
眼症状右のみ、攅竹から睛明へ向けるように1寸-0番鍼3~5mm平刺、瞳子髎移動穴とし眼窩骨の外に目尻から太陽穴へ向け平刺。
両側風池瀉。左風池から右申脈イオンパンピンクコード。
攅竹-睛明から右足三里(または内廷)同。
外関から完骨へ同、両側。

【治療後】
治療後は視覚聴覚症状はなくなり、右頚肩部の張り凝りもなくなり、右肩上部僧帽筋を摘まんだ痛さが解るようになったと言います。右半身全体の知覚鈍麻感は不変のようです。
また、両側膝関節の水腫軽減
膝蓋跳動・右(+++) → (++)
    ・左( ++ ) → ( + )
・・・・・・・・・・でした。

【備考・注意】
* 脈状を確認しつつ適宣補瀉を行う。
* 鬱症状では、脈有力のときには気鬱(弦脈、臍の左の張り圧痛、脇が張るなと肝気鬱滞症状)がある場合と、心気虚(心気が虚すと心楽しまず、精神不安、無気力)となる場合がある。脈有力であれば疏肝理気の瀉法を優先するが、脈虚では「湿」なと軟・濡・弛緩など虚系の脈状を示す邪気の存在に患者の症状や舌診を通じて注意し、邪気が有ればこれを先ず除き、脈気の回復が不十分ですあれば虚を補います。粘着性の湿邪を瀉法せずに補法を加えると、邪気を内へ追い込む誤治となります。腎虚として腎を補えば、湿は「土」の属性で、腎は「水」の属性ですから「土剋水」の関係となり腎が「賊邪の土」襲われることになります。粘着質で除き難い「湿」を「腎は封臓、蔵して漏らさず」へ追い込むことが良いかどうかは問うまでもありません。

22/06/2021

患者(50代男性)は
「生きかえりました」と言って帰って行きました。

主訴は
右肩上部僧帽筋から肩甲挙筋部に痛みがあり、ときに同側小指にしびれが出ると言います。

整形外科で頸椎のX−Pを撮り、医師から「椎間が少し狭くなっている」と加齢的変化を指摘されたと言いますが、7つある頸椎の何番目と何番目の間と言われたかは覚えていません。
肩甲挙筋の痛みの原因であれば第5頸椎前後、小指のしびれなら第7頸椎前後です。

頸を後屈(顔を上へ向けた姿勢)で頭を上から下へ押さえて頸椎の椎間を圧迫するジャクソン(Jackson)テストを行います。すると、肩甲挙筋付近の痛みは増悪しますが、小指のしびれは誘発されませんでした。
肩甲挙筋の支配神経は第4第5頸神経ですから、問題は5番前後にあるようです。

頸肩腕部の筋肉の硬結(凝り)と圧痛(押すと痛い)を右患側と左健側を比較しながら調べると、頸椎の2〜3番に関連が強い頭半棘筋(項のところの筋)は左右とも硬結も圧痛も大したことありません。頸椎の4〜5番に関連が強い肩甲挙筋には、右患側に強い硬結と圧痛があり左健側はなし、頸椎の5〜6番に関係する上腕二頭筋にも右患側に硬結と圧痛が強く、左健側にはなしです。前腕部の屈筋と伸筋では右患側よりも左健側の伸筋に硬結と圧痛があり、手を使っていて左手伸筋部が痛くなることがあるとも言います。
頸椎の左側、右側それぞれの神経の圧迫を診るテスト、顔を左(または右)斜め上を見上げるように向け頭の上から押さえて頸椎を圧迫する(Spurling)テストを行ってみましたが、右側で肩甲挙筋部の痛みが増す以外は手や指、前腕部への影響は見られませんでした。

脈やや滑にせてやや数(サク脈拍数90/分)、六分定位脈診 右関上滑やや有力(左関上尺中は虚)舌は胖大歯痕无 舌質の色淡紅やや赤くやや暗、苔潤滑。

・・・などから……
治療は
( 1 )まず、脈診と舌診から
曲地 足三里 内庭 陰陵泉(瀉)* 六分定位で弱いところを探すと、たいがい左尺中が弱いか、これに左関上も合わせて弱いか・・・のことが多い。これを腎虚、または腎肝虚として補うことは、誤治となる場合が多いように思う。飽食の時代、陽明腑実証的な患者が多く、この男性患者は右関上やや有力であったが、飲食による「甘味」や内外の「湿」の影響で脈状緩軟濡弱など虚に触れることが多くある。舌診での判断を加えず、虚を補えば「湿邪」「濁陰」を内側へ追いやる結果となる。腎を補えば「湿邪」は「土」、腎は「水」、「土克水」の賊邪を腎に押し込むことになる。このような誤治を繰り返せば、患者は慢性腎不全にもなりかねないのではないだろうか? 経曰く『腎は封臓、溜めて漏らさず』虚することはあまりないのではないか?それよりも、追い込まれた湿邪は抜き出すことができなくなりはしないか?
腎を補わなくとも、陽明胃経や脾経を瀉法し湿をが取り除かれると、左尺中の腎の脈気は回復する。
( 2 )次に、問題のある経脈
右側手足太陽経 と 左右の手足の少陽経を双手瀉法
………以上で、右肩上部僧帽筋の硬結圧痛はほぼ半減、左前腕伸筋の硬結圧痛はほぼ消失……
( 3 )頸椎側刺鍼法
第3/4/5/6の各頸椎椎間関節の関節突起側から横突起後結節へ向けて刺鍼する。肩上部僧帽筋の硬結圧痛、肩甲挙筋の硬結圧痛、上腕二頭筋の硬結圧痛の消失を確認目標とする。
( 4 )硬結圧痛が消失したら
仰臥位の姿勢のまま頸椎の徒手牽引を行い…枕についての注意を与え終了です。

22/06/2021

患者(50代男性)は
「生きかえりました」と言って帰って行きました。

主訴は
右肩上部僧帽筋から肩甲挙筋部に痛みがあり、ときに同側小指にしびれが出ると言います。

整形外科で頸椎のX−Pを撮り、医師から「椎間が少し狭くなっている」と加齢的変化を指摘されたと言いますが、7つある頸椎の何番目と何番目の間と言われたかは覚えていません。
肩甲挙筋の痛みの原因であれば第5頸椎前後、小指のしびれなら第7頸椎前後です。

頸を後屈(顔を上へ向けた姿勢)で頭を上から下へ押さえて頸椎の椎間を圧迫するジャクソン(Jackson)テストを行います。すると、肩甲挙筋付近の痛みは増悪しますが、小指のしびれは誘発されませんでした。
肩甲挙筋の支配神経は第4第5頸神経ですから、問題は5番前後にあるようです。

頸肩腕部の筋肉の硬結(凝り)と圧痛(押すと痛い)を右患側と左健側を比較しながら調べると、頸椎の2〜3番に関連が強い頭半棘筋(項のところの筋)は左右とも硬結も圧痛も大したことありません。頸椎の4〜5番に関連が強い肩甲挙筋には、右患側に強い硬結と圧痛があり左健側はなし、頸椎の5〜6番に関係する上腕二頭筋にも右患側に硬結と圧痛が強く、左健側にはなしです。前腕部の屈筋と伸筋では右患側よりも左健側の伸筋に硬結と圧痛があり、手を使っていて左手伸筋部が痛くなることがあるとも言います。
頸椎の左側、右側それぞれの神経の圧迫を診るテスト、顔を左(または右)斜め上を見上げるように向け頭の上から押さえて頸椎を圧迫する(Spurling)テストを行ってみましたが、右側で肩甲挙筋部の痛みが増す以外は手や指、前腕部への影響は見られませんでした。

脈やや滑にせてやや数(サク脈拍数90/分)、六分定位脈診 右関上滑やや有力(左関上尺中は虚)舌は胖大歯痕无 舌質の色淡紅やや赤くやや暗、苔潤滑。

・・・などから……
治療は
( 1 )まず、脈診と舌診から
曲地 足三里 内庭 陰陵泉(瀉)
( 2 )次に、問題のある経脈
右側手足太陽経 と 左右の手足の少陽経を双手瀉法
………以上で、右肩上部僧帽筋の硬結圧痛はほぼ半減、左前腕伸筋の硬結圧痛はほぼ消失……
( 3 )頸椎側刺鍼法
第3/4/5/6の各頸椎椎間関節の関節突起側から横突起後結節へ向けて刺鍼する。肩上部僧帽筋の硬結圧痛、肩甲挙筋の硬結圧痛、上腕二頭筋の硬結圧痛の消失を確認目標とする。
( 4 )硬結圧痛が消失したら
仰臥位の姿勢のまま頸椎の徒手牽引を行い…枕についての注意を与え終了です。

15/06/2021

患者は「右半身の感覚が鈍く自分の身体でないようだ*'」と言う。
数年前、精神科で「離人症」との診断を受け、現在は回復していると言う。*'この半身の感覚が鈍くなるのは、離人症の患者に多く起こる症状だと言う。

当院受診の主訴は、視覚の症状「眼のピントが合わない」「視ているのは分かるが注視できていない」「視ている現実感がない」など(離人症の視覚症状のよう)だが、とともに、視覚の症状があるときに同時に聴覚にも同様の「音にピントが合わない」と言う症状があり、頚肩が凝ると言うもの。

感覚が鈍い右半身は、重だるさがあり、眼の周りからコメカミかけても重くだるい感じがする。
耳も耳管閉塞のような塞がった感じがすると言う。

今回の5回目の治療となるが、鍼治療の後は、眼の調子が良く、耳も楽になると言う。ただし、右半身の知覚の鈍さは変わらないと言う。

*******************************

【鍼治療】
この患者で特徴的なのは「重だるい」と言う感覚てす。
脈診では、緩虚(ないし、濡)、六分定位脈診 : 右関上緩弱 左寸関尺虚。
舌診では、胖大歯痕なし淡紅やや赤い、苔は湿潤
・・・などから、
足三里瀉 陰陵泉平瀉平補 を先ず行い風湿を除き(後に、内庭瀉を加え若干の熱を除く)、次に脳神経と精神の問題であるので 照海瀉 神門瀉 とした(神門瀉は切経にて手少陰の硬結圧痛を診て、瀉法にてこの軽減消失を確認することが重要)。
・・・ここまでの手足の刺鍼で頚肩の凝りはほぼ消失した。
頚部、頚椎椎間関節部の触診を丁寧に行い、肩から上肢の筋緊張を合わせて触診し「頚椎側刺鍼法(私法)」にて筋緊張を解消します。
眼の攅竹から晴明へ向け刺鍼(0番1寸を3mm抜けない程度の刺鍼でよい)瞳子髎を眼窩の外に取り太陽穴へ向け刺鍼、手足少陽足臨泣・外関を双手瀉法し、手少陽耳脈のため外関と完骨双手瀉法、耳門、風池に刺鍼。

#離人症 #感覚異常 #半身知覚鈍麻 #視覚異常 #聴覚異常

18/03/2021

『 #脊柱管狭窄症 の 患者さん
     《Facebookページ「セイ鍼灸院」よりシェア》
新型コロナ流行のため、手術が『何ヶ月先になるか分からない』と日程が決まらなかったが、病棟逼迫状態が緩和されたらしく、4月初旬に手術日が決まり、鍼治療は終了です。

 横浜市の戸塚さん(仮名60代後半、男性)は、何回も整形外科の手術を受けています。
 まず、臼蓋形成不全で左股関節の骨切り術を1回、その後、同じ関節を人工関節に置換術で2回目。 次には、右股関節も人工関節に・・・で、3回目の手術。 そして、今回の脊柱管狭窄の手術で4回目だと言います。
 当院の鍼治療へは、手術日程が決まるまでの間の痛み緩和のために来ていたので、今回でとりあえず終了となります。  
鍼治療をしたからといって、脊柱管狭窄の骨や靭帯による神経圧迫がなくなるわけではないのですが、患者さんは『鍼治療後は3日ほど痛みの軽減があり楽だ』と言います。 』
~~~以上は、Facebookページ「セイ鍼灸院」投稿~~~

さて、ここ「鍼灸医学の門」では、より専門的に具体的治療方法について説明してみます。

この患者(戸塚さん仮名60代後半男性)は、MRI検査で脊柱管の狭窄、靭帯による神経圧迫が明らかで手術予定であることから、鍼の治療効果は出にくいものと考えられます。ですが、鍼治療を行うことで、筋の硬結(=筋緊張の亢進=筋の興奮)や興奮した神経の鎮静、炎症や浮腫の軽減などにより、疼痛やしびれを増悪していた因子が消えるために、症状の軽減を得られるものと思われる。

【鍼灸治療の基本的考え方】
私の鍼灸治療の考は一貫しています。「虚実を整え、気血をめぐらす」ことが鍼灸治療です。したがって、次の ❶ ❷ が治療の基本となります。
❶ 陰陽虚実の調整として、特に「邪気実」を除き、虚があればこれを補う。患者の訴え・病状・病態からの判断と、脈診と舌診による判断が重要となります。
❷ 三陰三陽経絡の疎通(気の流れの改善)をはかる。このため、経絡上の硬結圧痛の除去緩和を確認する。 このための刺鍼には ➀ 経絡的処方 と ➁ 支配神経からの処方 の二つがあり。 前者を優先し「主」とし、後者を補助的に「従」とします。

さて、実際の治療ですが・・・・・・

この患者で特徴的なことは、舌苔「灰黒色で厚くねっとり」している。舌苔の色は薄く白いを正常、黄色がかってくると熱、灰色や黒では熱が長期につづく場合と考えます。また、その性状が乾いているか、湿っているか、ねっとり粘性をおびているか、ぬるっとしているか等で燥熱、湿熱、痰熱などの判断をします。この患者ではねっとりして厚く黒に近い灰黒色で、何らかの湿熱が長期につづいていると思われました(中脘付近を圧迫すると重い痛みがあり、睡眠前に飲酒する習慣がある)。舌質は引き締まった感じで暗赤色でした。また、この患者は「熱がり」で、暖冬傾向とは言え2月中旬に額に汗をかいて来院しました。脈はやや数(脈拍数76/分)で有力、右関上(脾胃)やや浮いて有力、左尺中は弱く沈位は虚です(・・・が、これを腎虚とか言って補ってはいけません)。

❶ 陰陽虚実の調整としては
 「脈やや数有力」「舌苔のねっとりした灰黒色」「熱がり」
 に対応して、足三里・内庭・曲池(瀉加透天涼)陰陵泉(瀉)照海・三陰交(瀉加透天涼)
・・・・脈診、舌診にて改善変化確認し、❶にても筋の張り硬結圧痛は軽減改善して行くので切経にて確認する。

❷ 三陰三陽経絡の疎通としては

 ➀ 経絡的処方 
 ◇太陽経絡の促通 申脈・後谿(双手瀉法)・・・項部・腰背部の張り・大腿後側の硬結圧痛に対応。 
・・・・足太陽膀胱経と足少陰腎経は表裏経であるので、足太陽経脈の気の流れの改善は足少陰経脈の気血の流れに影響する。この手足の太陽経「申脈・後谿」双手瀉法とともに交互に❶での照海・三陰交寫を行う。照海は足少陰腎経脈のツボで脳脊髄神経を意味する「髄海」に通じ、腎経は「骨」に関係し、三陰交は「血」に関係します。三陰交の瀉法は、消炎作用があると考えられ、三陰交が関係する「血」には、血漿・白血球やマクロファージなどが含まれる。そう考えると、炎症の滲出液による浮腫の改善のみならず、炎症に伴って過剰に生成された肉芽や結合線維組織の分解吸収などの作用も期待できるのではないでしょうか?(詳しくは解りかねますが)
◇陽明経絡の促通 ❶の曲池・足三里刺鍼に(双手瀉法を交差して用い)・・・大腿四頭筋部の硬結圧痛に対応。
◇少陽経絡の促通 陽陵泉、足臨泣・外関(双手瀉法)

➁ 支配神経からの処方
◆項部の頭半棘筋の張り硬結圧痛の改善が①で不十分であれば、「頚椎側刺鍼法」第2頚神経後枝、第3頚神経後枝の刺鍼を行う。
◆腰下肢の筋の張り硬結圧痛が①で不十分であれば、「腰椎側刺鍼法」を行うが、下肢の筋と腰臀部の硬結圧痛と腰椎側の深部圧痛を診て刺鍼し、刺鍼中に下肢の硬結圧痛の軽減変化を確認する。

・・・・・以上のような鍼治療を週1回の頻度で6回施術。
治療後3日間は、『疼痛の軽減があり楽だ』と患者は言います。
治療間隔としては、症状の強い場合、週2回の治療を勧めている。

www.xn--eck2by271apj3abbd.net 26/01/2021

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#四十肩 #五十肩 #運動刺法 #筋委縮 #肩甲連動 #頚椎症性神経根症 #経脈からの治療 #筋の支配神経からの治療 #頚神経側刺鍼法 (私法)

患者(40代女性 会社員)は 昨年2月ごろから、左肩上部や肩関節の周り、上腕の筋に動作による痛みが始まったと言います。ちょうどそのころ新しい枕に変え『枕が合わない』と感じていたそうです。
また、在宅でのテレワークが始まった時期とも重り、不良姿勢でパソコンに向かう時間が長くなったと言います。

初期の時点で来院していただければよかったのですが・・・

初診は、ほぼ1年経過した今年1月で、四十肩・五十肩の完成した状態とも言える 「肩甲連動」 (陽性)です。
40歳代でこの状態になるのは珍しいのではないでしょうか?

筋委縮と硬結は、皮下脂肪が厚いのと、(たぶん)筋層の中に霜降り肉状態で脂肪が入り込んでいるためか? 筋委縮や硬結は外見的にも触圧診的にも分かり難い。

肩関節の「外転」の可動域は、測定不能です。肩甲骨を動かさずには体側からわずかに離れる程度(0~10度?)です。

「夜間痛」(陽性) 寝返りや患側が下になる側臥位で痛み、疼痛で目覚めることがある。

鍼灸治療は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【初期のものであれば】
四十肩・五十肩の初期 「動かすと痛みが出るけれども、肩関節の可動域に制限がない」ものでは、「運動刺法」が奏功する場合が多いでしょう。« 参照 : 「四十肩・五十肩の運動刺法」 https://www.xn--eck2by271apj3abbd.net/details1.html#%E4%BA%94%E5%8D%81%E8%82%A9%E5%9B%9B%E5%8D%81%E8%82%A9%E9%81%8B%E5%8B%95%E5%88%BA%E6%B3%95 »
四十肩・五十肩での運動刺法では、 ❶ 痛むところを流注する経脈の遠隔部にある経穴を用いる方法 と、 ❷ 痛むところ局所の阿是穴を用いる方法 と、 ❸ 痛むところ(筋)の支配神経から頚椎側に刺鍼する方法の3つがあります。 

【夜間痛】
夜間痛や「うずく痛み」は、頚椎症性神経根症です。
側臥位で患側肩関節が下になったため痛むのではなく、頚の姿勢での神経の圧迫や牽引で神経根症的に痛みが出ます。
この場合、伝統鍼灸医学的には、舌診で舌質の色「赤紫」や「暗赤紫」があります。炎症を抑える(消炎)作用が期待できる三陰交(瀉加透天涼)を処方に加えます。次いで、神経解剖学的見地から鍼灸治療で、「頚椎側刺鍼法」 «参照: https://www.xn--eck2by271apj3abbd.net/99_blank003.html#%E3%81%93%E3%81%AE%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%81%AE%E3%83%88%E3%83%83%E3%83%97  【四十肩・五十肩(肩関節の運動)に係わる筋肉の支配神経】 ttps://www.xn--eck2by271apj3abbd.net/img_34.jpg »加えます。

【肩甲連動】 【筋硬結・筋委縮】
「肩甲連動」は四十肩・五十肩の最終段階ですが、四十肩・五十肩の発症は筋力低下や頚椎の[加齢的変化]からの神経(特に運動神経)の影響で[筋緊張亢進]→[筋硬結]→[血行不良]+[筋疲労(傷や小炎症)]→さらに[筋硬結]が進み[疼痛]により動かさない→[筋委縮]・・・の悪循環からなると考えます。

鍼治療は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
脈診、舌診、切経などから、
① 先ず、邪気邪実(身体にとってあるべきでないもの、気の流れ、気機・気の働きを邪魔するもの)を除きます。
② 経気の鬱滞(筋の突っ張り感や硬結は気の流れが鬱滞している)を疎通促通させます。
③ 気血水(津液)の不足があれば補います。
④ ①~③で残った硬結圧痛を「頚椎側刺鍼法」にて処置します。加齢的変化からの頚椎症の治療では、この④の比重が多くなります。

さて、今回症例患者の「伝統的鍼灸医学」の診察では、
脈           :緩弱 
六部定位脈診      :右関上弱虚 
舌        :胖歯痕あり、
舌質の色        :全体に淡紅やや淡いが、舌側暗紫色 
舌苔          :白やや厚く湿潤 

【治療】は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(1) 足三里瀉、陰陵泉平補平瀉、三陰交瀉。
   
(2) 項部(天柱穴付近)の硬結圧痛を申脈瀉にて除き、
   肩甲挙筋の硬結圧痛に対し後谿瀉を加え、申脈ととも
   に双手瀉法する。
   患側(左)肩関節から上腕にかけての動作時痛に対し
    前面の痛み・・・・・に対し・・・・合谷
    外側面の痛み・・・に対し・・・・中渚
    後側面の痛み・・・に対し・・・・後谿
  を用い運動刺法を無理のない範囲で他動的に介助し行
  う。

(3) 頚肩腕部の筋硬結の残るもの(肩甲連動・筋委縮か
らかなり多く残る)に対し「頚椎側刺鍼法」を行う

(4) 脈・舌の変化、改善を診て、太谿曲泉補を加え。
   仰臥位の状態で、頚椎の徒手牽引を加える。

【第1回目治療結果】 第2診に来院し・・・・・・・
『痛くなくよく眠れました』
『洗濯物も痛みなしに干すことができました』 と言い,
肩関節の外転を肩甲骨を動かさず 30度 まで可となる

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